朝日に絶望する。
 朝日に嘱望する。
 薄暗い廃洋館並みの部屋。
 雑然と、しかし手入れの行き届いた室内。
 ベッドの上で眼を覚ます。
 窓の外から鳥の鳴き声。
 生活の雑音。
 廊下を歩く音はしないが、それは単純に広さに反して寮生が極端に少ない所為だ。
 身を起こす。
 身体の不調はどこにもない。
 睡眠不足は慢性的なもの。
 靄のかかる意識を振り払うことも出来ないで、そのまましばし沈黙を貫いた。
 光が入っている。
 明るい。
 薄暗い阿片窟の夢を見た気がする。
 もしくは、薄汚い老人の顔を夢見た気がする。
 死んだ身体から、死体として吐き出されたのに夢を見るこの異常さ。
 記憶の整理以外に、意味はあるのだろうか。
 考えたことは無い。

「千鶴」

 たった一人を求め続ける。
 夢に彼女が出てきたことはない。
 たった一人、もうそれしか残されていない。
 支払いさえ済めば人間に戻る彼らとは違い、己は真正の化け物。
 自覚しているから。余計に。

 嗚呼、眼を覚ましたくなどなかった。
 彼女を胸に抱いて。
 眠り続けてしまいたい。
 嗚呼、硝子の棺が愛おしい。
 いっそ鑑賞物に成り果ててしまえたら。


 嗚呼、朝陽が憎くて仕方が無い。



***
 チカちゃんバージョンも書きたいです。


永遠におやすみ




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