長い夢を見ていたようで。

 短い夢であったようで。

 眼が醒めて、一番に見つけたのは、強制運命共同相手。
 とりあえず蹴り出して、上掛けを引き摺って自分のほうへと引き寄せる。
 背を向けてもう一度眼をふせたところで、蹴られた。
 不機嫌にしながら、身体を起こせば脱色しすぎの割りに黒髪の混ざった頭。
「なんのつもりだ、赤月」
「なんだじゃねぇよ! テメェのせいだろうがクソシト!!」
「ここは俺の部屋だ」
 
自分がいて、おかしなことなどなにもない。
 言い返せばもごもごと、曖昧な返事。
 一応、自覚はあったらしい。
「俺は寝る。邪魔をしたら殺す」
「いいじゃんかよー、ここで寝かせろよー」
「ふざけるな」
 二度寝を決め込もうとする思徒に、かかる声。
 不機嫌さが露骨なままで、赤い瞳が睨みつけたけれど。
 頷くまで、騒がれるのはわかっているのか、大きく間を空けた後に好きにしろ。とだけ、返した。
 喜びに結局騒ぐ男を、無視してもう一度姿勢を直し寝る姿勢に入る。
 ふと、先ほどまで見ていた夢を思い出した。
 眠りを邪魔され、夢を邪魔され。
 不機嫌であったけれど、そこまで機嫌が悪くないと自覚できたのは。
 その夢のおかげかと、想う。
「―――嗚呼、そうか」
 屹度傍に体温があるなんて、そんな状況。(そう、ゾンビだって体温はあるのだ。とてもとても低くて、体温計では計れないけれど)
 彼女以外、ありえなかったせいか。
 ソレを感じただけでも、夢の縁となったらしい。

 細い指。
 細い線。
 細い髪。
 細い面。
 細い声。
 細い姿。

 儚げで、崩れてしまいそうなのが恐ろしかった。
 愛しい女―――母親。

 抱きしめた、骨ばった身体。
 嗚呼、あの時の体温を。
 思い出そうとして、もう一度眠りについた。
 願わくば、もう一度彼女に夢でいいから逢えることを祈って。



***
 チカは割りとシトの部屋に強襲かけていそうなイメェジが。


ともすれば、泡沫




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