てらてら流れていく。 涙液だと、誰もが思うだろう。 眼窩から流れるのに、涙液以外の、なにがあるというのだろう。 けれど。 その液体は、粘質で。 注ぎ込まれた空の眼窩を、その持ち主を、これでもかとばかりに傷つける。 「ひっあ、あがあ、あ」 いっそ惨めなほどの声に、けれど男はそ知らぬ顔で腰を動かし続ける。 ぞろり、ずるり。音が鳴るならば、そんなところだろうか。 くちゅり、こぽり。 音が立つ度に、悲鳴とも喘ぎともつかぬ声が上がっていく。 亀頭が、暗い眼窩を抉りこんでいく。 神経を犯し、骨を痛めつけるように、先よりも深く潜り込んで行く。 「ああああああああああああああああああああああああああああ」 獣の呻きに似た声が、悲鳴が、上がった。 男の細い瞳が、笑みになる。 うっとりとした表情は、上級の商売女を相手にするよりも恍惚としたもの。 ガクガクと痛みに震える身体は、すでに自分の意思では統御出来ぬのだろう。 わかっていて、董奉は思徒の髪を引っつかむと手に力を込めた。 別口に生まれた痛みが、理性を此方側へ戻す。 それが善行かどうかなど、男に興味はないが。 「あぎ、あが、ぐ」 「なにを仰りたいのか、さっぱりですよ。思徒様」 手を離し、眼窩に突っ込んだままの性器をまた前後させ始める。 無意味にばたばたと動く手が、抉り出したまま転がしっぱなしの眼球を指で弾いた。 柔らかく、弾力のある感触を思い出したのだろう。 珍しいほどに頬を紅潮させた男が、嗚呼、と声を漏らした。 途端、ぐちゅ、ぐりゅり。と、先走りが溢れて尚のこと彼を痛めつける。 赤い片方の瞳が、焦点を無理矢理合わせようと意識を繋ぎとめていた。 それを見やり、うっそりとした手つきで頬を撫でる。 普段ならば即座に払いのけられる手は、拘束も脱臼もさせていないのにされたままになっていた。 余程、眼球を抉られたのは堪えたらしい。 気分が良くなって、頭を押さえつけ眼窩に性器を出入りさせる動きを早めた。 締まるわけではないが、骨の当たる滑らかで硬い感触が心地良い。 「あ、思徒さ、ま………」 ハッ。 熱っぽい荒い息が、不意に頭上から零れたと思えば。 世界の片側が、赤に侵食された。 焼けるような激痛。 否、内側から腐らされるような衝撃。 ごぽ。っという音が、近くから聞こえてくる。 どこからかなど、考えたくも無い(眼窩からだ、それ以外の、どこからだと) 「あ、はは。お似合いですよ、思徒様」 未だ熱を孕む性器を、頬にぴたりと当てて、そのまま口に含むように示唆してくる。 でろりと、空の眼窩から男の精液が溢れた。 零れてくる生々しい液体が、涙のようというには。 その量は、聊か多く。 また、青い臭いを放ちすぎていた。 *** 空の眼窩から溢れる精液に萌える今日この頃。 |