言葉に、瞠目して。
 見ているのも可哀相なくらい、動揺して。
 けれど気付かない不利をして。
 どうしたのなんて、優しい声をかけて。
 可哀相なくらい、うろたえている知佳を、優しく優しくのぞきこんで。
 俺がいけないの? 思ってもいないくせに、自分のせいぶってみせて。
 慌てて首を振るのを、わかっているから。
 じゃあなんで。なんて、一歩進んで問い掛ける。
 躊躇う素振りが、弱くて、弱くて。
 かわいいかわいいかわいい。
 頭の中で、ぐちゃぐちゃに踏み拉いてしまいたい気分。
 蝶は、貼り付けても良いけど。
 綺麗なものは、踏み拉くのも、きっと快感。
「芝が、悪いんじゃねぇよ………」
 やっと搾り出した声も、弱いもの。
 気分を悪くしていないか、窺う視線に気付かない振りをして、本当? もう一度問い掛ける。
 恐れるような態度は、苛立ちを生まない。
 ただ、かわいいと思う。俺だけに見せている間は。
「なぁ。チカちゃんよ」
「あ?」
「ただいま」
「―――」
「ただいま、チカ」
 知佳の顔が、歪む。
 それは、心の一番柔らかいところを包む言葉で。
 心の一番柔らかいところを、傷つける言葉だ。
「俺が言っても仕方ない? ―――でも、ただいま。チカ」
 隣にずっといて、なにを。
 言おうとした言葉は、全て知佳によって阻まれた。
 ただいま、ただいま、ただいま。
 優しく繰り返される言葉。
 背から回された腕が、そっと頭を撫ぜる。
「ただいま、チカ」
「―――おかえり」
 言いたいひとは、俺じゃあないでしょう。
 とは、言わずに。
 髪を優しく撫ぜ続けてあげる。
 心が弱くなるように、祈りながら。





***
 芝チカでエロって難しくありませんか。


真実とどこまでも懸け離れても、




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