あ、あ、ひ、はァ。
 絶え絶えになりそうな、濡れた声が。
 白い白い部屋の中で響いている。
 肩をぺしょりと床につけ、抵抗出来るはずの腕はいつもと異なり呪符で拘束もされていない。
 けれどそれでも、這う男に抵抗の術が無い。
 否、あるはずだ。
 あるはずなのに、身体を動けなくしていった男のせいで耐えることが精一杯。
「あ、あう…、ぃぁあああ」
 くん、と背が震えれば、銜えこまされているものが腹の中を動いた。
 途端に、思徒は行動を制限される。
 爪を床に立てる。
 チリチリと、音が立った。
 もうこのままいっそ、爪でも剥いでしまいたい。
 そうしたらきっと、痛みで感じている感覚など殺せるはずなのに。
 思いこそすれ、勝手な怪我は厭う男の不機嫌を買いたくは無かった。
 飼いならされていないと、心から叫ぶのに。
 この身体は、もう随分と"董奉"や"徐福"に馴染んでしまっている。
 なんて、不快感だろうか。
「ひぃ、らぁ、あ、ううぅ」
 獣なんて言いようで、本当はそれよりももっと弱ったイキモノが。
 ずるずると、扉へ向かいたがる。
 けれどそれは、いくらも進まないうちに崩れる。
「あ、ふぅうううう」
 甘えるような、狗の声だ。まるで。
 だが、それを出しているのはほかならぬ自分。
 吐き気を催し、堪える暇があればこそ。
 昨日からロクなものを口にしていない口唇が震え、オレンジと白を吐き出した。
 饐えた匂いが、精液と胃液の混合物であることを教える。
 気道を塞ぐ中身さえ入っていなかった自身に、嘲笑を浮かべることも出来ない。
「思徒様、大丈夫ですか?」
 惨めに床を這って。
 下半身を剥き出しにしたまま、覆うことも赦さないで放置していた男が、いくらも経たず部屋の扉を開いた。
「………大丈夫に、みえるか?」
「いえ、全く。おかしいですねぇ。あなた、玩具に抵抗ありましたっけ?」
 あるに決まっているだろう、という言葉は、血の気が抜けてしまった口唇からは発せられなかった。
 それに、死にはしないが本格的に弱っているのを見て取り董奉はふむ。と考える。
「抜いて差し上げますから、そのままの体勢で」
 ふざけるなと言う気力もなく、嫌悪感に鳥肌を立てていようとそれでも男の望むままにぐたりと動かされる。
 男は思徒の下腹を強く押し、出てきたそれと口部を摘まむと思慮もなにもなく抜き取った。
 一息に引き抜かれ、這ったままの彼が衝撃で達する。
 男の衣類を汚したが、互いに気にかけるような性分はしていない。
「ふむ。―――温かくなっていないのがつまらない、というところでしょうか」
「………ゾンビの腹の中に入れて、硝子細工がどうなる期待をしていたんだ。お前は」
 ハァハァと荒く息つく彼の下肢は、どろどろと汚れている。
 乱雑にシャツで精液を拭っていれば、ずい。と銜えこまされていた硝子細工―――それは、細いが厚みのある一輪挿しだった――― を差し出される。
「はい。思徒様」
「今度はなんだ」
「舐めて綺麗にしたら、今日はお終いにして差し上げますが?」
 笑みが崩れることはない。
 それ以外を選ぶとしたら、なにをさせるつもりかわからない。
 うんざりとしながら、冷えた装飾も特に無い硝子細工に舌を伸ばした。
 精液と胃液が引っかかって、喉が痛い。



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 なんとなく異物挿入プレイ。(ちょ 
 


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