久しぶりに逢う旧友と、話しながら、楽しみながら夜を往く。 夜道は気持ち悪いくらい静かだったけれど。 昼が生者の、夜が死者の時間というなら、それも道理。 深夜過ぎて、信号待ちをすることも無く目的地に向かう。 「おらパシリー。テメェもうちょっと気合入れて走れよなー」 「そ、そんなこと言っても仕方ないじゃないですか。私、運動得意じゃないんですから……」 走っていたのも最初の話。 眼であるみちるがいなければ、急いだところで無意味に他ならず。 結局、彼女の足に合わせることになった。 彼女自身、急いでいるのだろう。 肩で荒く息を吐き、整えようとしている努力はわかっている。 わかっているが気が急いてしまうのは、早い者勝ちの獲物のせいだ。 相棒というよりは、無理矢理運命共同体。が似合う相手に視線をやるが、大して気にすることもなく時折みちるに声をかけるばかり。 なんとなく、面白くない。 「あらら? チカってば御機嫌ナナメ?」 「誰が!」 「お前がー」 にへらと笑いかけ、芝はチカの髪を撫ぜた。 わかっているよと。暗に言ってやる。 手が、懐かしかったせいか。 語を詰まらせて、すぐにガキ扱いすんなー! と刃向かってきた。 それに、すぐさま手を離してやる。 あまりしつこくしても、いけないのだ。 経験則として、それを芝は知っている。 言い返す言葉は言葉にならず、代わりに首肯を得た。 それをちらと見ていたみちるが、感心の声を漏らす。 だが、芝としては然程凄いという意識は無いのだ。これは単純に、時間が教えてくれたことである。 「………っと、チカ」 後ろ手に引けば、妙な体勢のままで仰がれた。 不審げで不満げな相手に、指を差して教えてやる。 「赤信号。この辺は、まだやってんだね」 交通量が多いのだろうか。 そういえば、大きな通りが近いのか車の音が先程より多く聞こえてくる。 「ん、わり」 「いやいや」 気にしないで。言いながら、腕を放さない。 まだなにか用事でもあるのかと言いたげな瞳を、べろりと舐め上げた。 「―――?!」 「あっはは。チカ、慌てすぎだろ」 食って掛かられる前に、手を離してやる。 タイミングを逸した彼はもう、術がない。勿論全部、計算ずくだが。 「みちるちゃん達も追いついてきたし、行くよ。チカちゃん?」 「〜〜〜〜〜〜!!」 横断歩道の、白いところを踏みつける。 まだ赤いままの、信号機。 *** 赤信号、みんなで渡れば大事故だ。 |