「暑ィ〜〜〜〜〜」
「ま、夏だし?」
「にしたって暑ィ〜〜〜」
「黒い髪って、熱吸収しやすいのかねぇ?」
「芝ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「はいはい?」
「暑い」
「あのねぇ、チカちゃん? 流石の俺も、天候にまでは手出し出来ません、って」
 屋上。
 日を遮る影にはいるけれど、暑さはいくらでも追い詰めてくる。
 暑い暑いという知佳同様、芝とて暑いのだけれど。
 いつもの顔で、なんなく彼をいなしてみせるのだから流石というべきだろうか。
 お手上げだという風にしていた芝に、それでも近づく彼を見れば矛盾だろうと誰かが言うだろうか。
 青すぎる空がうんざりする。
 それでも。
「なぁー、芝ぁー」
「んー?」
「どっか行こうぜ」
「どっかって?」
「どっかはどっかだよ。ここ、暑ィし」
「んー、ま、いっか。行く?」
「おう!」
「で、マジでどこに」
「とりあえずコンビニ!」
「とりあえずで終わりそうな気全開」
「っせぇ! その時はその時!!」
 とりあえず、一秒でも早くもっと涼しいところへと、芝を引っ張り上げようとする知佳に、少年はまた失笑するけれど。
 気にすることもなく、早く行こうと急き立てる。
 どこかへ、行けば。
 退屈は紛れるだろうか。生きているだけで、異様に退屈な、自分は。
「はやくしねーと置いてくぞ〜!!」
「行くから待って、って。チーカちゃん?」
 今は。
 彼がいるから、何処へ行く気も、ないのだけれど。
 夏の最中。
 青い空の下。
 どこへも行けるものか。
 周知の現実だけが、笑顔で追いかけてくる。逃げることも、出来ぬまま。



***
 頭が良すぎるのも考え物。


夏死光線




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