銀色が、絨毯を這っていた。 勿体無いと思いながら、それでもザンザスはスクアーロの好きにさせている。 沸点は低いが、決して愚かな男ではない。 本当に必要な時には、必要な振る舞いが出来る男なのだ。 果たしてそれが、彼の本質であるのかそれとも引き取られて以降御曹司として徹底的に叩き込まれた教育の賜物かはハッキリしない。 右手で、彼はザンザスの手を包んでいた。 握り、開き、また握る。 指先の間に白い指を差し入れては、くすぐるようにしながらまた包んで同じことを繰り返す。 いい加減飽きるかと思えば、そうでもなかった。 愛しげに目を細めては行われる愛撫は、悪くない。 「……なぁ」 「あ?」 「悪かった、なぁ」 声は小さかった。いつものアホのような大声は、どうしてしまったのか問いたい程に。 言及することもなく黙していれば、やはりスクアーロは片手にじゃれている。 「なぁんも、あげられなかったなぁ。結局」 ゆりかごでは、裏切りと隠蔽をただ彼に見せ付けるだけの結果になった。 指輪争奪戦では、自分は負けたし当然指輪は手に入らないし男は10代目を襲名することは出来なかった。 誓いは、嘘では成立しない。 誓いは、嘘なんか欠片も含まない心で打ち立てられたのに。 現実は、そんなことまるで頓着してはくれなかった。 「ごめん、なぁ………」 何年降り積もった、ごめん、だったろうか。 やっと、ごめんにまで、辿り着けたのだろうか。 スクアーロの心は、あの日から動くことを拒んでいる節があることを、ザンザスは心のどこかで理解していた。 子供じゃないだろうと言われれば、それまでだけれど。 大人だって、納得出来なくて癇癪を起こす子供のように涙を見せることだってあるだろう。 ようやくそこにまで、心が動かせたのではと。 思えるのならば、そう悪くは無いとザンザスは思った。 「謝ることじゃねぇだろう」 「でもよぉ……」 結局なにも、与えることは出来なかった。 九代目と血縁であるという証拠も、ボンゴレ10代目としての居場所も、なにも。 彼が血を吐く程に渇望して欲しがっていたものは、なにもあげられない。 「カスが。誰がお恵み頂戴と言った」 低い声は、不機嫌そうなそれである。 凍傷まみれの頬が、不敵に笑んだ。 怒りではないが、もっと澄んだ赤色がそこにある。 嗚呼、と、馬鹿みたいに口をあけてスクアーロはその色に見入った。 もしかすれば、憤怒の赤ではなくて。その奥にあった、この色を、幼い自分は見出したからこそ。 ついていくことに、躊躇いがなかったのかもしれない。 「いらねぇよ」 慈悲と同情で救われるなんてのはご機嫌な妄想の中だけだし、今更表舞台で踏ん反り返るのも面倒くさい。 自分は硝煙と闇と流血で高笑いを浮かべて、死体の椅子で血溜まりを踏みつけていたほうが気楽で良い。 血縁しか縋れなかった子供なんて、もう消えていたのに。 まだ囚われていたのかと、笑えもしない。 九代目の実子である証拠なんていらないし、ボンゴレ10代目なんて肩書きもいらない。 ただ、手放せないものがひとつあるだけでいい。 言ったって理解しないだろうから、この銀色に伝えてやる気はないが。 嗚呼、それでも。 *** 自分のことでしゅんとなってるスクを見るのは気持ちいいボス。(ドS |