塔に捕らえられているのは、果たして。



 黒髪が艶やかに床を這っている。
 日がな一日窓を眺めている彼の人は、生気も無く覇気もなかった。

 まるで美しい人形のようだ。
 紫色の瞳は、ただぼう、と明後日の方向を見つめたまま焦点が絞られることはない。

 口ずさむこともない唇は、なにかを紡ごうとしてはその度に引き結ばれる。

 細い肢体、柔らかな肌はそのほとんどを服の下に押し隠しているけれどそれでも尚細さが際だつのだから羨望を越えて心配を抱く者が大半だろう。

 彼の人は誰も待っていない。


 そんな姿は、誰の瞳からも全てを諦めてるように映っていた。





 

Rapunzel




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