Cの世界より愛を込めて




「ルルは外見がマリアンヌそっくりで、ナナリーは性格がマリアンヌそっくりなんだね」
 PCに向かい、データを纏めつつ課題を処理していたルルーシュは、その声に慌てて振り返った。
 銀色の髪、長身、ヘッドフォンと、ギアスを隠すためのバイザー。
 殺しかけては死なず、結局C.C.が止めを刺したはずの青年は彼の恋人で親友で他人で、母親ともいうべき彼女に抱きついた姿で立っていた。
「マオ………。お前、どうして………?!」
「C.C.に逢いたかったから、戻ってきたんだ! Cの世界から!」
「……………C.C.」
「なにも言うな」
「…………C.C.」
「…………」
「うちではこれ以上養育費を出すことが出来ん。今すぐ元いたところに、捨てて来い」
「そんな可哀相なこと、出来るわけがないだろう! 鬼かお前は!」
「ああ鬼だ。修羅の道を歩むと決めたからな! 付き合ってもらうぞ、この俺に!」
「三度目の正直という、日本の諺を知らないのか!」
「二度あることは三度あるということを、骨の髄まで叩き込んで来い!!」
 元気溌剌に答えたマオ、抱きつかれたまま振り払えず邪険に出来ずぬC.C.、そんな彼女を半眼のまま睨みつけるルルーシュ。
 次の瞬間口論に発展し、嫌な状態の三竦みがここに成立した。
 兎も角どういうことだと説明を求めたルルーシュに対し、非常にわかり辛い説明にC.C.の補足をいれながら聞いた結果は、こうだった。
 ギアスにより生き筋を歪められた人間は、Cの世界というところへ行く。
 マオは、ギアスを宿し死んだことでCの世界へ行った。
 けれど、C.C.に逢いたくなって、逢いたいと騒いでいたら周囲があわせてくれると言った。
 気がついたら目の前にC.C.がいて、嬉しくなって飛びつき、そのままこのクラブハウスへ来た。
 非常に端的に説明してしまうと、そういうことだった。
 とりあえず現状をC.C.と確認しあいたいとだけ言って、マオを室外へ放り出す。
 彼なりに思うところがあるのか、それともC.C.にすまなさそうに言われたためか、案外あっさり出て行った。
 足音が遠ざかっていくのを確認してから椅子へ全体重を預けると、耐え切れぬようにルルーシュは深く息をついた。
「………嘘だろう」
「事実だ。確かに、私と同質の存在はCの世界にいるし、一応行き来を出来る者もいるが………」
「なんだ」
「根本的に世界が違うんだ。そうそうこんな真似、するはずがない」
 マオ一人を送るにしたところで、相当の労力がかかったはずだ。
 眉間に皺を寄せ、難しい顔を浮かべたままのC.C.とは対照的に、ルルーシュの頭は非常にクリアだった。
「碌なことを考えていないと良いんだが。ただでさえ、一部を除けば性格の悪い奴ばかりだったからな」
 短く舌を打ち彼女に向かい、大丈夫だろう、と端的に声をかける。
 何故そんなことをと言わんばかりの相手へ、ルルーシュはいっそロイヤルスマイルさえ浮かべた。
「C.C.! C.C.! ナナリーに折り紙教えてもらったよ! ほら、チューリップ!!」
 見てみて! と、ドタバタ入ってくるのがほぼ同時。
 どうやら、切り替えの出来ないギアスが会話の終了を感じ取り走ってきたようである。
 折り紙の花に顔を綻ばせてマオを褒めていれば、生温い視線を感じ取り共犯者を見やる。
「大方、マオがお前に逢いたいと大騒ぎして、それを鬱陶しがった周囲が協力し合ってこっちに送り返してきたんだろう」
「……………。ありがとう、マオ。嬉しいよ。可愛いチューリップだな」
 全てを聞かなかったことにして、C.C.はマオに向き直り微笑んだ。
 先ほどのルルーシュもかくやと言わんばかり。正しく、会心の笑みである。
「ありがとうC.C.! C.C.大好き!!」
「嗚呼、私も大好きだよ。マオ」
 ひし、と抱き合う二人を前に、勘弁してくれとルルーシュは呻いた。
 二人まとめて追い出そうとさえ、考えたのである。
 が。
 シスコンの彼が、同い年だろうとどう考えても子供の対応しかしないマオを邪見に出来るはずもなく。
 結局、ナナリーに以前の件をしっかり謝ることを条件に、居候を赦してしまうのだった。



 その頃Cの世界では。
「く! あの子供、五月蝿くしていたと思ったら、今度はルルーシュのところだと! 赦せん!」
「まぁまぁ。落ち着いてください、クロヴィス閣下」
「そうですよ。静かになっただけでも、良しとしないと」
「えぇい黙れ! 私もルルーシュ達の元へ行くぞ! またチェスを打つのだ!」
「マリアンヌ様ー、ホントどうにかしてくださいこの方ー」
「俺らじゃ止めきれませんよ、本当に」
「あらあら、そろそろ落ち着いてください、クロヴィス様。こちらでお茶にしましょう?」
「そうです、クロヴィス兄様。マオさんが羨ましいのは、わたくしもなのですよ!」
「クロヴィス・ラ・ブリタニア、うるさいよ。少しはユフィを見習えば?」
「えぇいV.V.! ちゃっかりマリアンヌ様の隣に座るとは何事か!! それに私の妹を愛称で呼ぶとは図々しいぞ!」
「うるさいクロヴィス」
「ぬぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「落ち着いてください、兄様! わたくしは気にしておりませんから!」
「マリアンヌー」
「あらあら」
 もういっそ、クロヴィスもCの世界から追い出さねぇ?
 そんなことが、クロヴィスの親衛隊達の間で密かに囁かれていた。
 なんとも平和な世界である。



***
 ギャグです。
 完全に捏造です。
 Cの世界って、本当になんでしょうね? 軽いノリが書けてちょっと驚きました。





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