眼下には崩れ行くトウキョウ租界。 誰かの愛したひとがいて。 誰かを殺したひとがいて。 それらを踏みつけていたひとがいて。 それらを蹴散らす存在が。 今、ここに。 「友達、か」 失笑を宿して、C.C.は振り返りもしなかった。 高らかに笑う彼の瞳からは、既に涙など無いのだろう。 ここからでは、アッシュフォード学園が無事かどうかはわからないが恐らく無事か、疑われぬ程度の被害は被っているものの、それだけのはずだ。 何故ならあそこには、この男が守りたい全てがある。 彼女を失ってはこの反逆は意味を成さないはず。 ならば矢張り、ギリギリで無事だろうというのがC.C.の見解だった。 嗚呼、ならば部屋に置き去りにしてきたチーズ君は無事だろう。 「友達さ。七年前から、ずっと」 散々苦渋を舐めさせてくれた白兜、もといランスロットのデヴァイサーだと知っても。 ユフィの騎士になっても。 それでも、友人だと思ってきていた。 大切だと思ってきていた。 それは今も、きっと変わらない。 変える意味なんて無いと、気づいたから。 「俺をゼロだと知っていようが、知らなかろうが、関係ない。興味も無い」 握りこんだ皮手袋が、軋む音を立てる。 C.C.は前を向いたまま。 一瞥も与えない。 今この瞬間に声をかければきっと。 見せてくれるだろう、あの夕陽が差し込む部屋で。 傍にいると誓ったことに、安堵した少年の姿を。 けれどそれはC.C.の望みではない。 また、ルルーシュも望んでいないはずだ。 修羅になることを決めた少年王は、望んでいないはずだ。 どちらも望まない結果など、一度だけで良い。 彼女の望みのために。 彼の悲願のために。 だから。 「流石だな、コーネリア。この状況から、すぐに陣営を立て直すために動くか。だが、時間は与えん。いくぞ、C.C.」 「私に命令をするな。ガウェインを動かしているのは、誰だと思っている」 「ふん、相変わらず高慢な女だ」 「当たり前だろう。私は、C.C.だからな」 望みを叶えるために、切り捨てて進もう。 嗚呼、マリアンヌ。 やはり私は。 優しくなど、なれないよ。 あの時。 やさしく名前を呼ばれた、あの時に。 震えたこころは、未だ胸に宿っていたとしても。 *** A.F.学園は無事だと信じています。ナナリー死んじゃったらルルのこれまでが……! 開き直って、もうガンガン殺しあってくれたらいい。 憎しみあって殺しあってくれたらいい。そのほうがいっそすっきりする。 |