「だめ………!」 目の前を遮る、ミルクティ色のふわふわとした髪。 幼い頃、彼女の髪を結うことが好きだった。 それが自分の仕事だと、胸を張っていた。 守るべき、大切な妹。 その向こう側には、大切な幼馴染。 銃口を向けた、幼馴染。 その銃弾が、貫いた、の、は。 「なな、りー………?」 おまえが、たとえ黒の騎士団の誰を殺そうと。 俺はお前を恨むことはないだろう。 おまえが、たとえどれほど俺の手を拒んでも。 俺はお前を恨むことはないだろう。 おまえが、たとえ俺を殺そうとしたところで。 俺はお前を恨むことはないだろう。 けれど。 スザク。 「ご無事ですか? おにいさま………」 見えぬ瞳で真っ直ぐに。 見つめる彼女の身に、力は入らず。 開かれた瞼の奥。 久しぶりに見た、鮮やかな菫色。 可憐な花のいろ。 「うん、ななりー、が、たすけてくれた、から」 「よかったぁ・・・」 微笑む少女。 光を、歩行能力を、目の前で母を。 奪われて尚、微笑んでくれていた愛しい少女。 「なな、りー?」 微笑んでいた少女。 心配をかけまいと、微笑んでくれていた少女。 ミルクティ色の髪が。 ふわふわと腕に触れる。 あたたかい感触。 やわらかい感触。 君を、守るために俺は。 君に、優しい世界をあげたくて俺は。 ななりー。 「ナナリー?」 現実を認識できない、思考がついていかない、誰が殺した、何故殺した、彼女を、少女を、ナナリーを。どうして、なぜ、だって彼女は なにも悪くない。なにも悪くないんだ。咄嗟に飛び出した彼女、俺を守るために、俺のせいで? 俺のせい、で。俺のせいで。どうして、どうし ておまえがそこにいるんだスザク、どうしてナナリーを殺した銃を、お前が持っている。どうして、お前が驚いているんだ、お前が、おまえが、 オマエガ、お前が、お前が、お前が、お前が、お前が、お前が。いいや違う。違う、俺のせいだ。俺が。どうして知っていた、知っていても言わなかった? 優しいお前は、俺に心配をかけまいとしてくれていたのか。ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーなな、りー。ナナリー、ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー ななりー、ななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりーななりー 「ナナリー」 彼を騎士にと、望んだ。 彼ならば、彼女を仕合せにしてくれると思ったから。 彼女ならば、彼と仕合せになれると信じたから。 けれど。 俺達は、彼に選ばれることはなかった。 彼は違う人間を選んだ。 俺達はそれを寂しく思いながらも。 祝福するしか出来なかった。 恨むなんてしなかった。 押し付けだろうと。 彼のためを思いたかった。 なのに。 「なのに」 おまえがななりーを殺すのか、スザク。 *** ガウェインは、ランスロットとアーサー王が仲違いを起こした時も、彼を討つべきではないと反対しましたし、息子二人殺されても恨みませんでした。(個人的には恨めよ、と言いたいですが しかし、そんな彼のことなんぞ知らんとばかりにガウェインの弟まで殺されました。最終的には、本人も殺されました。 なんの比喩か、物凄く怖いところ。咲世子さんも出てきてしまいましたし(がくがくぶるぶる) |