イリーガル・ブロック




 ルルーシュはスザクを愛していた。
 どちらからの告白、ということはなかったけれど、互いに愛し合っていたことに間違いは無いだろう。
 だから、セックスという行為に流れ込んでいくことも酷く自然に思えた。
 思えたはずだった。
 圧し掛かるというには、スザクはルルーシュに気を遣っていた。
 出来るだけ四肢に力をかけようとさえしない彼に、ルルーシュは微笑ましささえ抱いた。
 キスすることは、嫌ではなかった。
 抱きしめることも、嫌ではなかった。
 それは好ましいものだった。
 けれど。
 衣類を割られ、脱がされ、下着さえも抜き取られ。
 ようやくそこで、感覚の齟齬に気がついた。
 違う、
 ただそれだけが、頭の中に響いた。
 違う、これは、違う。
 愛しいひと。大切なひと。
 何をおいても、守りたい大事な存在。
 それが、ルルーシュにとっての柩木スザクという存在だった。
 彼を否定する要素など、今まで持ち合わせていなかったはずだ。
 なのに、唐突に気付いてしまった。
 違う、求めていない。求めたのは、違うものだ。
「す、ざ………」
 やめて欲しいと、願えればどれ程良かったか。
 けれどルルーシュには、その願いを口にすることが躊躇われた。
 スザクは、拒絶されることを極端に恐れている。
 大抵の者ならば笑顔で仕方なさそうに容認するけれど、もしも、自分に拒絶されたことを知ったら?
 自惚れではなく、壊れてしまうのではと危惧を抱かせた。
「すざ、く。すざく」
 拒絶できない代わりに、口をついて出たのは懇願の声音だった。
 身体を舌が這う。
 柔らかい弾力、かかる息、指先の乾いた感触。
 なにもかもがリアル。
「あ、す、ざ、ああ、う、い、あ、ぁ」
 断続的にも漏れる声音も、それすら吸い取ろうとするスザクの唇も。
 わからなくなった。
 愛しているのに、それは確かなのに、違うと叫ぶ。
 恐怖の声さえあげられない。
 愛しているのに、愛せていない身の内。
「すざ、く。すざく、すざく」
「うん。愛してるよ、ルルーシュ、大好き」
 触れる肌、篭る熱、衝撃も何もかも。
 ベリルの瞳が、細まるのに。もう抱きしめ返す腕の力さえ、弱く成り果ててしまっていた。
 愛しているのに、愛しているのに、愛しているのに。
 これは違うと、身を丸めて泣いてしまいたかった。



***
 ルルーシュは、親愛と友愛。スザクは愛は愛でも情欲付。(ていうか、17歳の正常な男子としてそれが正常。)
 親愛と友愛だということに、押し倒されて始めて気づく。
 でも、好意の感情その他諸々ありすぎて、スザクを否定することも出来ない。ひどい。





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