断片葬




 困惑と混沌の極まる中で。
 ぽつと零した声音に、C.C.は眼を瞬いた。
 それから、少し考え込むようにする。
 其の間にも、ルルーシュはどこか疲れた表情で、語を連ねていた。
「瞳は駄目だ。特にギアスはな。これから、どうしたって必要になる」
 最早後には引けぬのだ。
 対策を考えれば、たとえ両目にギアスが発現しようと日常生活はなんとかこなせるはずだ。
 眼科へ行った証明書でも作れば、学園だって対応を考えてくれるだろう。
 特に、こんなことになってしまったのだ。
 元皇子なんて、格好の標的となってしまう。そのための顔隠し、でも、きっと良いだろう。
「腕も、駄目だな。操縦にしろ、キーボードにしろ。必要だ」
「なにが操縦だ。私にほとんど任せておいて」
「電子戦は、俺の管轄だろう」
「それしか出来ない男が」
 ふん、とC.C.が鼻で笑う。
 高慢な様は、変わらない。彼女自身が、そうだからか。
 はじめから知っていたからか。なんにせよ、対応が変わらないということが、これほど安堵できる存在になるとは思わなかった。
「足も、駄目だな。いくらブリタニアの医療技術が優れているといっても、見る者が見ればわかる。プロもいる。それに、KMF戦ではGの負荷が掛かりすぎる」
 日常生活に、支障の無いようにするための代物だ。
 KMF戦に耐えるように、といって、恐らくラクシャータならば問題ないだろうがそのためには骨格からなにから見せなければならない。
 仮面を外す口実も与えてしまう。
 ゼロは、顔を見せてはならないのだ。そこに虚像を流し込んでこそ、ゼロという。どこにもいない存在が確立する。
「指は? 日本では、惚れた相手に小指を捧げることもあったというぞ」
「そんな派手なことをすれば、ルルーシュとゼロがすぐに繋がる」
 それに、末端など嫌だった。
 簡単ではないだろうけれど、昔から風習として捧げられてきたものでは違う気がした。
 何より、彼女との間に色恋沙汰なんて無い。無意味だ。
「では――、命は?」
「それこそ却下だ。命を捧げて、この状況が落ち着くか? 日本が独立できるか? ブリタニアがつぶれるか?」
 答えは否だ。
 何度でも繰り返す。もう、後には引けないのだから。
 だから、ここで逃げ出すわけにも、身を翻すわけにも、ゼロをやめるわけにはいかないのだから。
 だから命は。捧げられない。
「我侭な奴だ」
「嗚呼、そうだな」
 それでも捧げたかった。
 自己満足で、構わないから。
「なぁ。どれを捧げれば、彼女の罪を俺が背負うことになれるだろう」
 いっそ朗らかな笑顔で。
 問う言葉こそ。
 狂人のそれだと、思っていてC.C.は曖昧に微笑んだ。
 そんな答え、長きを生きる彼女だって持ち合わせていない。



***
 C.C.とルルばっかりでごめんなさい……!!
 でも、あの、現状ルルがちゃんと話せるひとって彼女くらいしか思えなくて……!
 嗚呼本当に王の力は孤独にするな……!





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