ルルーシュは、ここしばらくずっと胸にひっかかっていることがあった。 有体に言えば、悩んでいた。 柳眉を寄せて、考えるのはいつもそのことばかり。 勿論、ゼロとしての活動もある。 ゆえにそうそう其方へ意識を持っていくわけにもいかなかったが、つい時間が空いた日にはいつでも考えてしまっていた。 嗚呼。 嘆息にも似た吐息が漏れ、生徒会室に集っていたメンバー達も顔を見合わせた。 ここしばらくの彼の悩みようは、少々異様と言っても良い。 ルルーシュがテスト以上の能力を持っていることを、ここにいる人間達は知っている。 その彼が、ここまで悩んでいることはなにか。 気になって気になって、仕方が無い。 とはいえ、ルルーシュが誰かに悩みを打ち明けることが出来る性格でもないこともまた、熟知していた。 ナナリーに遠回しに聞いてみても、わからないということである。 半分以上予想していたとはいえ、全員揃って肩を落としたのだった。 「まぁ、ナナちゃんに悩みを相談するとは思えないけどねぇ〜」 ミレイの言葉に、一同が頷く。 彼の妹に心配をかけるくらいならば、苦手な力技をもってしてでも彼ならば解決へ動くだろう。 事実、そこまでナナリーも心配しているようには見えなかった。 好きなだけ悩ませてあげましょう、というのが彼女の判断らしい。曰く、本当に深刻ならば空気に違いが出るらしい。 さすがはルルーシュの妹。聡明である。 「とはいえ、なぁ〜………」 気になるものは気になる。 不意に顔を上げては、少しだけ遠い眼をして作業に戻る、ため息をつく。 気にならないほうがおかしい。 「………スザク!」 「な、なに?」 「会長命令〜。ルルちゃんが、なにを悩んでいるのか聞いてきて」 直球で言われ、まぁ妥当だろうと頷くのがリヴァル、そんなことより仕事しなさいよというに言えないのがカレン、スザクに話がいった段階で怯えるのがニーナ、シャーリーは本日水泳部のほうへ行っているためお休みである。 それなりに心配はしていても、重要度が高くないあたり彼らのお遊び精神が見て取れる。 「僕ですか?!」 「そうよ? 一番ルルちゃんとも近いじゃない」 「え、でも、ナナリーにも言わなかったんですよね?」 「ナナちゃんに心配かけたくないから、言わないってこともありえるでしょ。いいから聞いてきなっさい!」 どーんと突き出されるようにして、ルルーシュの元へ送られる。 勿論、ここで踏鞴を踏むほど鍛えていないわけではないが、それでもふらふらと彼のもとへ行ってしまった。 もくもくと書類チェックとホチキス留めをしているルルーシュは、いつもよりも仕事が速い。 悩みにばかり頭がいってしまって、無意識に本来の力が出てしまっているせいだろう。 「あ、あのさ、ルルーシュ」 「なんだ?」 「えーっと、その………」 顔も向けずに手元へ集中していたのだが、煮え切らない態度に引っかかりを覚えたらしい。 身体ごと横へ向けて、スザクに向き直った。 「えーっと、だからさ。その………」 悩んでいる人に、なにを悩んでいるのか聞いて果たして答えてもらえるのか。否、そもそも、立ち入って欲しくないから言わないのではないか、そうしたらこれは不躾にもほどがあるのでは。 彼が正面に向き直ってくれたことから、余計にぐるぐると考え出してしまう。 そんな態度を知ってか知らずか、不意にルルーシュがスザクの名を呼んだ。 「な、なに?!」 素っ頓狂な声音を出してしまうスザクに対し、ルルーシュは真面目な顔になり。 「ハウス」 ずっこけた。 全員がずっこけた。 絶対そうだと、スザクは思う。 話に参加せずにいたカレンでさえ、机に額を打ち付けていた。 「……………、わん?」 再度、鈍い音がカレンのほうからする。 なんでそこが疑問符なんだとか、むしろ返事するのかよ、とか、色々ぶつぶつ聞こえてくるのは気のせいだろう。 気のせいということにしておこう。段々口調が荒れていって、病弱なお嬢様に聞こえなくなっているのも気のせいだ。 「そうか、やはりお前はそうなんだな」 嗚呼すっきりした、と晴れやかな笑顔で頷くと、ルルーシュは手元の作業に戻った。 先ほどよりもペースがゆっくりなのは、悩みが解消されたためだろう。 スザクといえば、ハウスと言われるからにはどこかへ行ったほうが良いのか、それともここにいて良いのか、え、むしろ寮に戻るべき? と頭を悩ませていた。 *** ハウス、を使いたかったのです。それだけです。 だって今週(22話)明らかにシリアス展開だから!! 莫迦ギャグでも良かろう、と。 17話よりも前、ですので、カレンも病弱設定のまま動くに動けません(笑) |