ごつ、こ、ご、ごつ、こつ。 鈍い音は、少年の額から続いている。 ご、つ。こ、こつ、ご、ごつ、ごつ。 手にしているのは、彼の手に馴染んでいるものだ。 ごつ、こつ、ご、ご、つ、こつ、こ、つこつ。 黒色の艶など放つことのない。 ご、こ、つ。こつ。 向けて、向けられて。かかる指先。 こつ、こつ。こ。 安全装置は、既に外されていた。 、つ。 「ルルーシュ」 困ったような声音で、C.C.は少年の名を呼んだ。 銃を突きつけては、額に打ち付けて。 なにをしているのだと、呆れ顔。 「脳漿ブチ撒けて死にたいのか?」 「まさか」 自殺する気もないと、平然とした様子で告げる。 ではなにをと問い掛ければ、曖昧な語が返ってきた。 「ルルーシュ。余計なことを考えるお前の脳みそを、たまには休めてやればどうだ」 黒の騎士団に休みは無い。 人数が増えれば、幹部以外はローテーションを組んで業務に当たることが出来る。 そのお陰か、業務は滞ることなく日々は続いている。 必然的に、戦略を担うルルーシュは休みが無い。 「明日はまともに活動もないのだろう、なら、学校に出たらどうだ?」 補修はあと何教科残っているのだったか。 言われれば、彼自身自覚しているのだろう。 肩を竦めて応じた。多すぎてわからないとのことらしい。 「たまには、せめて生徒であれよ。ルルーシュ」 「俺が?」 「おめでたい連中と、莫迦でも言っていればいいだろう」 私と出会う前のように。 C.C.の言葉に、一度は首肯をしたけれども。 全面的な肯定は、少年からは得られなかった。 「頭のどこかで、ずっと怨嗟の声を聞いていた」 ブリタニアをぶっ壊す! 子供の頃からの願い。叶えると決めていた願い。 ずっと、頭のどこかで。もしくは胸の中心で、それは騒いでいた。 「そういえば最近は、随分と静かだ」 無意識か、赤い鳥の宿る瞳へ指を這わせながらルルーシュが低く嗤う。 「当然だろう。訴えなくたって、お前は忘れないほどの位置に、もういるのだから」 ぶっ壊せと呪う声は、憎しみを忘れないためのもの。 壊すために、優しい世界を作るために生きろという、自己暗示にも似たそれ。 今はもう、必要ない。 四六時中言い聞かせていなくとも、連絡がくれば彼はゼロとなり壊すために、作るために、動くのだから。 「ルルーシュ」 細く名前を呼ばれ、振り返る。 ガチン、という、引き金を引く音は、幻聴だったかもしれない。本当はもっと、軽く簡素な音だ。 「自殺ごっこは他所でやるか、私の願いを叶えてからにしろ」 「そうするよ」 ぽい、と銃を投げ出すようなことはなく、マントや仮面と一緒に片付ける。 追いやられた銃は、けれど彼がゼロになればまたその手に戻る。 いつか、ゼロだけが残りルルーシュは消えるだろう。 引き金を引くごとに、ゼロがルルーシュを殺すようで。 ぞっとしないと、C.C.は身を翻した。 例えそうだとしても、止めぬ我が身を愚かと思いながら。 *** 21話派生ネタ書きまくってたら、21話じゃないネタを書こうと唐突に思いつきましたものですから。(ハイ。 ゼロとしてのみ生きていくことを決めて、ルルーシュが消えるので第一部終了とかなったらちょっと本気で落ち込みそうなのですが。 どう終わらせるつもりなのだろう……。(はらはら) |