ベッドの上。 はじめは、C.C.の言うとおりソファで眠っていたルルーシュであったが、それは途中から心底呆れたような言った当人によって撤回された。 曰く、言われたからといって本当にソファで寝る莫迦がいるか。とのことである。 それに対し、言葉を詰まらせながらも女と一緒に寝る気は無いと言ったルルーシュであったが、彼の数少ない女性経験を鼻で笑われたことを契機に共に寝るようになった。 当然ながら、其の間になにかあったことは一度も無い。 流石に、自分に魅力がないと思いたくは無い。 だが男として大き目のワイシャツ一枚にときめかないのはどうなんだ、と僅かに不機嫌さを隠せなかった。 深夜である。 黒の騎士団から帰還し、それぞれシャワーを浴びてベッドにもぐりこんでいた。 体力のないルルーシュにとって、戦略や戦術の立案、情報戦の指示はともかく戦闘はひどく消耗するものである。 いくら仮面をつけているため気付かれ辛いとはいえ、それゆえに限界を知られぬままになってしまうことも多い。 唯一C.C.の前で仮面を外すがゆえに、体調の良し悪しを何とはなしに察することが出来るようになってしまった共犯者は、ため息をついた。 疲労度が濃い。 これでは、明々後日の作戦では途中で集中力が切れてしまうことだろう。 死なれては困るのだ。 ため息を一つついて、黒髪に手を伸ばす。 うつらうつらとしているせいか、払いのけるような反応はなかった。 瞼を押し開くことさえ、今は億劫なのだろう。 ルルーシュは本来前線に立って指揮するタイプではない。 後方で支援をすることが、彼の本領でもあるはずだ。 だが、刻一刻と変わる戦況といくらキョウトの後ろ盾が出来たとはいえ圧倒的過ぎる物資の差、また、イレギュラーをいくつも勃発させてくれる白兜、ランスロットのせいで、 彼が直接前線に出て指示を下さなければ黒の騎士団に未来は無い。 随分と、いろいろなものを乗せている。 気付いているが故に、C.C.は息をついた。 伸ばした腕が、手が。そうっとそうっと、髪を撫でる。 艶やかな黒髪は、明るいところで見ればきっと天使の輪が見えるはずだ。 そうっとそうっと撫でる手指に宿された優しさに、ルルーシュの口元が僅かに綻ぶ。 意図してのことではないだろう。 態とならば、彼女がからかい倒してくることをわかっているはずだ。 故に、C.C.もなにも言わないことを決めてひっそりと目を伏せた。 そのまま、幾度も手を動かす。 指に絡まぬ黒髪は、触れる此方も心地良い。 「おやすみ、ルルーシュ」 もうほとんど寝ている男へ、けれど彼女は囁きかける。 おやすみ、おやすみ、おやすみ。 眠りの中でだけはせめて。 安らげるように。 戦場ではないように、祈っていよう。 奪われた過去ではないことを、願っていよう。 屍血山河の未来を見ぬように、希んでいよう。 おやすみ、おやすみ、おやすみ、ルルーシュ。 大切な幼馴染を助けてばかりで、殺される確率ばかりをあげている愚かな男。 今はおやすみ。 愛しい私の共謀者。 *** 私は一体、C.C.になんの夢を見ているのでしょうか。(悩 彼女、男前ですよね……! えぇと、王子様でお父さんで共犯者で共謀者です。 最後の「愛しい」は、「かなしい」と読んでいただけますと嬉しいです。 |