そもそもなにが間違いだ。 権力を求めに求めた、前首相である柩木玄武か。 それとも、ブリタニアが掲げる弱肉強食の精神か。 それとも、支配されるだけの日本、エリア11の弱さか。 それとも、支配を甘んじて受け入れないレジスタンス達か。 そもそも、なにが間違いだ。 どこからが間違いだ。 なにを間違いだとするのだ。 ガウェインの上で、エネルギー砲の余波に熱くなった身体は海風で冷やされていっている。 思い返しながら、カレンは呟いた。 音が聞こえるはずはない。 だが、ふさぎこむ様子の彼女に気づいたのだろう。 ゼロ、ルルーシュは、外部スピーカーへ音声を切り替えて問いかけた。 『どうした、カレン』 「あ、いえ! なんでもありません!」 心配かけたと思われたせいか。 すみません! という、謝罪も続く。 それへ、謝る必要は無いと、低い声音。 変声機は、未だ壊れたままだが彼女は声を変えていると思っている。 以前疑って以来、それは思っていたことだし、なにより電話やその後の彼の行動に彼女は心酔していた。 疑うことは、今更無い。 「ゼロ」 『どうした』 内部で、カメラを自分へ向けているのだろう。 届く声音に迷うようにしていたが、やがて口を開いた。 別に、迷っているわけではないのだ。 それは確かだ。 確認したいのとも、また違う。 なんだろう、なんだろう。 けれどどうしても、聞きたくて仕方ない衝動が、少女の胸のうちに溢れている。 「誰が、間違いなんでしょう」 もしくは、何処から、間違いだったのでしょう。 なにもブリタニアの現皇帝が、あの精神だったわけではない。 ブリタニアは、もうずっと前から、弱者を切り捨て強者のみとする風潮が続いていた。 では、日本が悪かったのだろうか。 カレンは、首相がどういった人間であったのかを知らない。 ニュースで顔と名前と、最期を知ったくらいだ。 彼女には、圧倒的に手札が足りない。 知らないままでいた頃が長く、知り始めようとした時には既に兄はレジスタンス活動に身を投じていた。 だから、情報が足りない。 なにが間違いで、正しくて、最善で、最良だったのか。 選別するだけの、要素が足りない。 『全てが間違いだったと、言うつもりはない』 彼は知っていた。 柩木玄武の野心も、ブリタニアのやり方も。 『……だが、嗚呼、どうなのだろうな』 私にも、わからない。 それは、本心なようだった。 誰か知っていたら、教えて欲しかった。 どこからが間違いで。 なにが間違いで。 どれが間違いで。 どこから正せば、良かったのか。 そうしたら、クラスメイトと殺し合いなんてせずに済んだだろうか。 遠目に、黒の騎士団の潜水艇が見えかけていた。 *** スザクのやり方が、正しいとは思いません。 では、なにが正しいやり方なのかと言われたら、わからないのですけれど。 |