「どうして言わなかった?」 「なにがですぅ?」 「アレが生きていることを」 「あ〜ぁ。だって、言っても意味ないでしょぉ? どーせもーすぐこっちに来るんだったんだしぃ」 「楽しみがあれば、もっと早くに来ようとしていたさ」 「それはそれは。申し訳ありませんでした」 わざとらしく正式な最敬礼をとるロイドに、シュナイゼルは浅く笑った。 まぁいい、と仕切りなおすようにして、差し出す手に傾くのが薄藤色の髪。 茶化すな、笑いさえ含ませながら、もう一度促すように振る。 ディスクをその手に乗せて、ロイドは更に目を細めた。 「ゼロのデェタ〜。コーネリア殿下から提出要求されているのに、僕なりの解釈つき〜。お〜めぇ〜で〜と〜〜〜! 彼が黒の皇子である可能性は、47.6%くらいかなぁ」 「高いな」 「まだ低いほうだと思いますけどぉ? 幼少期の骨格と、その後の生育環境なんかを照らし合わせて誤差まだけっこぉありますしぃ」 「四割を超えれば充分だ」 「半分以下の数値で、ご満足ぅ?」 「今は、これだけなのだろう」 「まぁそうなんですけどねぇ。あ〜ぁ、ルルーシュ殿下がKMFに一度でも搭乗している公式記録がどっかにあったら、それで反射速度とかの癖も見れてもっと確率あがるのにぃ」 「十歳の子供に乗せるほど、流石のブリタニアも酷ではないさ」 「コーネリア殿下は、お乗りになっていたと伺ってますけどぉ?」 「リアが強く強請ったからな。ルルーシュは、そういう願い出をあまり好まないでいたようだ。もっとも、母の影響で多少の興味はあったようだがね」 「ふぅ〜ん。まぁ、この辺りのデータはどっかで集めましょ。流石の殿下だって、グラスゴーやサザーランドを見ただけで覚えた、なんて直感で動かしてるわけじゃないでしょうしぃ」 どこかで必ず、大なり小なりの練習はつんでいるはず。 それを引っ張りだせば、反射速度、反応速度。他様々な数値が手に入る。 「ランスロットの片手間ですから、時間かかりますけど構いませんよねぇ?」 「あぁ。私も、やることがあるしな」 「怖ぁい。殿下、壊さないでくださいよ?」 「どれをだ?」 「おや。どれか一つにしてくださると? それはなんともおーやーさーし〜〜〜〜〜ぃ」 エリア11もランスロットもそのデヴァイサーもブリタニア人もナンバーズもゼロも黒の騎士団も不可思議な遺跡も、何もかも! 壊そうと思えば、できるだけの力を、既に得ている金糸の髪を穏やかに揺らし、微笑む男。 神聖ブリタニア帝国。 強さを何より至上とし、弱者を切り捨てることが国是とされる国において。 次代頂点に、最も近いとされる麗しの君。 「よぉこそ! 未だ混迷極まる可能性だけは無駄にある世界、エリア11へ!!」 道化らしく、ロイドは大仰な身振りで腕を広げた。 深まる酷薄な笑みを見る者は、生憎彼の旧知の人間だけで。 だから、これから更に膨れ上がるだろう混迷も混乱も、彼だけしか予測することが出来なかった。 *** ちょっと蛇足。 いや、どこに入れようかと悩んでしまって(第二段)↓ 「ところでロイド、その気持ち悪いですます調はなんとかならないのか」 「殿下が、その胡散臭い笑いをやめてくれたら考えます。」 二人はタメ口希望。 |