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これは、とても古い記憶なのですけれど。 ぽつりと、今思い出したように、ナナリーは菫色の瞳を明後日へ飛ばしてペンを傍らに置いた。 指先を重ねることなく、小さく、彼女は呟いた。 傍にいるのは、ゼロのみ。 声を大きくする必要も無い相手のためか、声音はどこまでも静かだった。 「古すぎて、もしかしたら私の脳みそが勝手に作り上げてしまったことかもしれないんですが」 言うも、彼女は執務に取り掛かろうとはしなかった。 晴れやかな空を見せる、世界。 鳥が歌う世界。 空ろな菫色にはどう映っているかなど、ゼロは知らない。 「むかしむかし。私がほんの乳飲み子だった時に、お母様が仰ったんです。お兄様の子を、産んでみないか。って」 「……ルルーシュの?」 倫理的にあまりに外れた発言に、さしものゼロも声を上げる。 けれどナナリーは気にすることなく、首をかっくり前に倒した。 「それがどうして必要だったのか、どうしてそんな発言にいたったのか。私は覚えていません。ただ、言われたような気がすることを、この間思い出したんです」 青い空は、どこまでも続いていた。 窓という枠の中で、世界はめいっぱい輝いていた。 「出来たらいいと、今、思いました」 「ナナリー陛下。それは……」 「すみません。ゼロは、ブリタニア皇族内での倫理観の低さはあまりご存知ありませんでしたよね」 「歴史としてなら、一通りの知識はあるつもりだが……」 「駄目ですよ、そんなもの。感覚として享受出来なければ、意味はありません」 もっとも、血族婚はブリタニアに限らず古今東西の名家が成していることである。 遺伝学的に危ない、と認知されたのはここ百年にも満たない話で、それまでは危険性はあるものの濃い血を残すもっとも有用な方法として使われてきたのだ。 「この世界に、お兄様を生みなおすのは私でありたかった」 今度こそ、お兄様にはしあわせになっていただきたいから。 私が、しあわせにしてさしあげたいから。 「お兄様のお母様に、私がなりたかったです」 薄い腹に手を当てて、切なそうに少女は微笑んだ。 「コゥ姉様に聞きました。中華連邦にあった施設のこと。このブリタニアでも、ギアスに関する研究がいくつかなされていたこと。……確認出来ないのが、残念です」 ぜんぶ、フレイヤによって消えたり、お兄様とC.C.さんの手で消されてしまいましたものね。 残念そうに笑う少女。 あくまでも少女であるのに、彼女は甘く重い蜜の匂いを漂わせている。 「この世界は、やさしくていじわるです」 お兄様と私を、いつまでも引き離す。 どことなく拗ねたようにする彼女に、ゼロは口を挟まなかった。 少女の苛烈さは、年々あらわになってきている。 地金が出てきた、ではないが、本来の彼女の調子を取り戻そうとしているのだろう。 そうして、世界に立ち向かうことが。吉となるか凶となるか、ゼロには知る由もない。 ただ、彼は世界の平穏のために自身を歯車とするだけだ。 願いを託してきた少年のためだけに。 「お兄様。どうか、生まれるならナナリーからでないと、嫌ですよ。お兄様のお母様になって、お兄様のお傍にずうっといるんです」 夢見るような瞳が、世界を見つめる。 四角い紙に閉ざされた、世界の状況。 現実を踏みしめて、少女は夢を謡う。 *** あ、あれ? 黒通り越して、ナナリーこれなんてヤンデry ゼロの中身は枢木さんです。 |