女は不遜に微笑んで。 そして、手を伸ばした。 ルルーシュは、仕方のないような笑みを浮かべて。 そして、手を取らない。 「いっそここから飛び降りようとは思わないのか、ラプンツェル」 「盗賊の娘に齎される福音を、信じられるはずもない」 「王子は盲目だったのさ。そして流れ者だった。だから、お前がどこの誰かなんて気にしない」 チシャの実の対価に、売られた娘。 盗人の娘。 魔女は、本当に娘を拉致したのだろうか。 それとも、いつか娘が親によって売られる前に助け出そうとしたのかもしれない。 魔女自身が娘をあまりに大事にしたものだから、どこへも行かないように誰からも傷つけられないように、閉じ込めてしまうという結果に落ち着いてしまっただけで。 「娘は、どんな気分だったんだろうな」 「悪い気分ではなかったろうさ」 歪んでいても、愛だと知っていたなら。 感じ取れたなら、束縛は束縛ではなくなる。 鳥かごは、外敵からも自身を守ってくれる鉄壁の守り。 鳥かごと共に自滅しない限り、鳥かごは鳥を永遠に守るために存在する。 魔女は笑う。 王子様は、いるのかいないのか。 ルルーシュは、助けにきてくれる王子様なんて知らないだろう。 この坊やは、ひとに甘えることが本当に苦手なのだ。 必要な時に、誰もそれを認めてくれなかったから。いまさら、自分に余裕が出来たから、今更、それを彼に要求するだなんて。 虫の良すぎる話だ。 もうきっと、この男は、劇的な助けや運命による救済なんて。 夢見ることも、していないのかもしれない。 まして、自身を魔王と名乗り振舞うからには。そんなものが優しく頬を撫でるなんてありえないと。 視界の隅にちらついたとしても、気づかぬ振りで見なかったことにするのかもしれない。 あまりにも、哀れな男だ。 あまりにも、愛しい男だ。 この男自身が、はじまりではないのに。 愚かな復讐者の一言で終わる、男ではないのに。 周囲に沸いた罪業全てを、細い四肢に擦り付けられた黒い羊。 何事かもわからぬまま、父母の決めたチシャの対価と定められてしまった娘と同じように。 「なぁ、ラプンツェル」 「―――」 「世界から逃げ出して、安全な魔女の腕の中は如何かな」 誘いかける、柔らかな優しさ。 魔女は知らないけれど。恐らく、彼が信じるとしたら、それはこの魔女から齎される慈しみ以外には、ないのではないか。 そう思わせるには、十分な慈愛。 けれどそれでも、涙も出ないほどかなしい笑顔で、彼は。 *** はぴばはちゃんと書きたいです。 ルルに逃げ場をあげたかっただけなのに、なんだこの電波……。 年末進行は体力がりがり削られていきますね……(遠 |