そうして世界は動き出す。 かつて、そして現在C.C.と呼ばれる魔女の精神世界。 そこで向かい合う二人は、あまりにもよく似た容貌をしていた。 髪の色も、瞳の色も、肌の色も、唇の色も、ふとした瞬間に動かす手指の繊細さも。 どれをとっても、同じものでしかなかった。 実際、ただひとつの違いさえなければ視界を覆い尽くしている鏡でもあるのかという錯覚を抱かせただろう。 方や、白い拘束衣。 方や、藍色の拘束衣。 なんとか見つけられた違いは、ただそれだけだった。 「満足か?」 白い拘束衣を纏う女が口を開いた。 笑むこともなく、藍色の拘束衣を纏う女が口を開く。 「満足さ」 今度は、藍色の拘束衣を纏う女が先に口を開いた。 「満足か?」 やはり似通う仕草で、白い拘束衣の女が口を開く。 「満足だとも」 二人が同時に笑い声を漏らした。次の瞬間には、笑みをさっぱりと消して向かい合っている。 「何故、こんな真似をした」 「わかっているのに聞くのか?」 「わかっているから聞くのさ」 「簡単なことだ。私たちは、ギアスにかけられたのだから」 「………」 「あの時、アーカーシャの剣で、あの男は言った」 口の端が持ち上がるのもまた、双方同時だった。 思い出しているのだろう。 人類意思への呼びかけ。 あれは、あの少年の心からの叫びだった。 『それでも俺は―――明日が欲しい!!』 少年の人生は壮絶だ。 膝を折ったことは、何度もあるだろう。諦め、放り出しかけたことも多いだろう。 けれど結局は、成し遂げようと必死で足掻いて。 なにより、明日に希望を見出していた。普通、あれだけの人生を負っていたら未来に希望なんてものは抱くことも出来なくなるだろうが。 かたくななまでに、それでも人は美しいのだと、明日は素晴らしいのだと、朝は来るのだと。 彼は、直向にがむしゃらに、信じていた。 胸をうたれたのだ。 あの姿に、"人"は。 「明日が欲しいと、明日を捨ててしまう人間が多いなかで、あんなにも必死に叫んだあの子が、明日を得られないなんて。そんなこと、あってはならないでしょう?」 だから、あげるの。 明日を。 彼が求めた、明日を。 もしかしたらもっと最悪が待っているかもしれない、けれど、きっと、それだけでは無いと、願ってしまうから。 「人類意思の総意は、彼の魔王に明日をあげることを決定した。お前はどうする? C.C.と現在呼ばれる魔女」 「ふん、決まっている。あの男は、私に約束したんだ。私が笑って死ぬように、するとな」 約束は守らせる。私は、魔女だからな。 契約には厳しいぞ。言う彼女の瞳は、けれど柔らかな微笑みの形だった。 *** 明日が欲しいと叫んで、"人"の明日を守ったルルがあんな早死にってなんでさ!! のと、逆行ネタが自分の中で奇跡の合体。 一ヶ月も間が開いてしまい、失礼しました。連載終了出来て本当によかった………!! |