呆然としてしまうのも、仕方ないことだろうとルルーシュは思う。 目の前の皇帝を、完膚なきまでに叩きのめすナイト・オブ・シックスを僅か離れたところから見つめながら、ルルーシュは腰を抜かしたまま見つめていた。 ぱかん。と、簡素な音を立てて殴られればそちらへ顔を向ける。 再度、胸に驚愕が走った。 「お前………!」 「久しいな、ルルーシュ。いや、そうでもないか?」 この一日で、あまりにも大きなことが起こりすぎているだけで。 実際、シャルルを選びかけた時から時間はそう経っていない、と、女は肩をすくめた。 白い上下から露出する、ほっそりとした四肢。 鮮やかすぎるほど鮮烈なライトグリーンの髪を持つ少女など、ルルーシュは一人しか知らない。 怯えたような眼ではなく、傲岸不遜の魔女がそこにいた。 「お前、記憶が………?! どうして……!」 「引っ張り戻されてきた。なんだ、さみしかったのか?」 「そんなわけないだろう!!」 咄嗟に言い返してしまえば、にやりと口の端で笑われた。 なんて魔女だと、罵りたいのに言葉が出ない。 「悪かったな」 「なに……?」 「記憶のない私は、さぞや面倒だったろう?」 問われて、しげと眺めやれば魔女は歯痒そうな表情だった。 それに、嗚呼、と思い当たる。 彼女にとって、あの過去は自らの汚点なのだろう。 騙されて受け継がされてしまったコード。その前は奴隷として身を窶し、主に媚びて、明日の痛みに怯えて、膝を抱えて震えていた。 友達が欲しかったなど、今ならば言うはずもない。そういったものを、諦める前の姿なのだ。 あの、少女は。 思い当たれば、思わずのように失笑が漏れた。 不満げな女に、けれど笑みがこぼれるのは仕方がないのだと肩を震わせる。 「そうでもない。お前に比べて、大人しいし生意気は言わないし。そうだな、なにより勝手にピザを頼まない」 茶化すように言ってやれば、意図がわかったのか女も笑う。 「その代わり、勿論お前が私のためにピザを作ったのだろうな?」 「誰が騎士団内でやるか。デリバリーに決まっているだろう」 「おやおや。頼んでくれたとは驚きだ」 言われれば、ぐぅの音も出ない。 かんらかんらと笑う女に、魔王を名乗る少年が笑う。 「まったく、約束を果たす前に消えるな。馬鹿め」 「フン。この私を罵ろうなど、百年早い」 「どこまでも生意気な女だ。まったく、これならば以前のほうがマシだ」 「残念だったなルルーシュ」 消えてはやらないよ、もう二度と。 きんいろの瞳が細くなって、女の口元には笑みが宿る。 消えてはやらない、もう。魔王の傍にいるのは、無力ではかない奴隷ではない。 魔女こそが相応しいのだから。 「叶えてくれるのだろう? 私の願いを」 「嗚呼、笑って死ぬためにな」 それでいい。それがいい。 魔女は頷いた。 そっと、互いに出した手を取り合う。 「これは契約。私と、お前の」 「不履行にしかけたのは、お前だぞ」 「戻ってきてやったんだ。大目に見ろ」 どこまでも尊大な態度の魔女に、魔王は呆れたような安堵したような表情を崩さない。 何度だって、確かめ合っては認め合うのだ。 何故なら、自分だけが決めても、彼女だけが諦めても、認められぬもの。 互いにいなければ、動くことも出来ない契約なのだから。 *** 色々言いたいこととかはあるんですが、とりあえず。 お帰りなさいませC.C.様!! しぃちゃんも好きだけど、やっぱりC.C.様が大好きです!! |