その存在に、ゼロという仮面に自己を押し隠していたルルーシュでさえ蒼白になった。 通称をフレイヤとする、その大量殺戮兵器の威力を目の当たりにしたのだから当然だ。 なるほど、確かにシュナイゼルが演説していたように、世界の戦争は変わるだろう。 ミサイルやサクラダイトを利用した爆薬よりも、もっと効率的で能率的な爆弾。 さしもの藤堂も、眼前の光景が信じられなかったのか唖然とした表情である。 『安心して欲しい。これは、あくまでもデモンストレーション。爆発半径周辺150キロに人間は一人もいないし、民家もない』 国の実験場として買い上げたのだと、笑いかける男に狂気を見る。 こんな広大な土地で、一人もいないなどありえない。 ただ実験をするだけの場所に、ブリタニアがしておくはずもない。 絶対に、誰かいたはずだ。 それが復興を認めない植民エリアだとしても、対外的に誰も住んでいないはずであり、いるのは不法侵入者だけだとしても。 誰かはいた。 それを、笑顔で堂々と、切り捨てた男に背筋が凍る。 『さて、それを踏まえた上で合衆国連合の皆様方にお聞かせ願おうか』 通信チャンネルを開いているわけではない。 あくまでも、一般電波を利用した放送である。 けれど、これが黒の騎士団、ひいては対立姿勢にある他国への牽制行為であることは火を見るより明らか。 『私は、戦争は嫌いでね。あのような非効率的な行動は、愚かであるとしかいえない』 だから。 続ける言葉が、やさしい色をしている。 『いい子だから従いなさい。君らは戦えるだろう、我々ブリタニアと。だが、そうなるなら我々は戦争をしていないエリアにコレを落としてしまうかもしれないよ』 脅迫だ、扇が乾いた声でつぶやいた。 ハッタリだ、玉城ががなり立てる。 ゼロ。ディートハルトの伺うような声音に、しかし言葉を返せない。 落とされる映像を見るまでならば、ハッタリだと言ったかもしれない。 脅迫に対して屈する黒の騎士団ではないと、団員達を鼓舞することも出来ただろう。 しかし、それでは遅すぎると思われたからの行動か。 既にデモンストレーションとはいえ、為されている。 目にした衝撃は、覆しようが無い。 「ゼロ」 緊急通信のフェイス・ウィンドウが、演説にしてはやわらかい語り口のシュナイゼルの隣へ並ぶ。 星刻も、厳しい顔をしていた。 彼もこの爆弾の威力に、気づいたのだろう。 そして、シュナイゼルがなにも冗談で言っているわけではないこともわかっているに違いない。 ブリタニアという国の中で、穏健派はごくごく一部である。 オデュッセウスを筆頭とした彼らの中に、実はシュナイゼルも組み込まれているなど誰が想像つこうものか。 だが、事実シュナイゼルは穏健派の一員だった。 彼は皇帝よりも優しいだけでしかない、という程度だったが、示威行為と外交手腕でEUの土地を根こそぎ奪っていったのだ。 ラウンズの戦力としての行いは、あくまでも後押しに過ぎない。 九割が、彼の独自の手によるものである。 そんな男が、武力を手にした。 コーネリアよりも拙い、ラウンズなどとは比べるべくもない。 軍略の優れた腕はある、ゆえにアヴァロンやG-1ベースで指揮をとっている、ただそれだけの武力しか持っていないはずであったのに。 今は、戦争の設定を根底から揺るがすものを手にしている。 優れた知略と、戦略も戦術も無意味に帰すような大量殺戮兵器の組み合わせ。 なんて悪夢だと、動けもしないでルルーシュは唇を噛み締めた。 『悪あがきをしても構わないよ。私は寛大だからね』 そうと決めたのならば、手抜かりなく相手をしてあげよう。 笑いながら言うが、それは結局猫がじゃれつくほどにも思っていない証拠である。 『世界が滅びるまで、いったい幾つフレイヤは死者を迎えてあげれば良いのか。数えておいで、ゼロ』 切り替わる映像は、廃墟ですらない。 まっさらとも言えない、真っ白とも言えない、すべてが吹き飛ばされて砂礫と化した、一時間前までは確かに傷んではいたが街の形をしていた場所。 眩暈がする。なんて、悪夢だ。 けれど目を閉ざしても開いても、醒めることが出来ない。 *** こんな展開になったら嫌だな第何弾?← でもやりそう監督。てか、頼むからマリアンヌ様がつかった同型機のガニメデに核っぽいのとかつけないでくださいorz 元々、アッシュフォードはあれ「福祉」目的で作ったんだぜ? ニーナ………。 |