平穏な世界を、信じていた少女。


 すべてに気がついてしまったという、重苦しい現実に。


 立ち向かってくれた少女。


 死んでしまった、殺されてしまった。


 自分のせいで。自分が巻き込んだせいで。


 だから。


「シャーリーは最期までギアスに翻弄されて、ギアスに殺された。ならば俺は、ギアスを殺す。この力を、この存在を!」


 違うよ、違うよルル。
 わたしこんなことして欲しくない。違うの、気がついて。お願いだから。
 傷ついて欲しくて、私はあんなことを言っていたんじゃないの。


 嗚呼、悲鳴が聞こえる。

 絶叫が聞こえる、命乞いが聞こえる。

 お前たちは、それが出来るだけまだいいさ。

 だけど、シャーリーは。

 彼女は。


 お願い、お願い、あなたが泣く必要なんて、どこにも無いの。
 これ以上自分を傷つけることはやめて、お願いだからやめて。
 子供や無抵抗の人まで、ルルに殺して欲しくないよぉ。
 どうして声が届かないんだろう。どうして聞こえないんだろう。
 私恨んでないよ。私、もういいよ。
 誰かの命で救われるなんて、思えないよ。


 ミサイルの爆音。
 逃げ惑う人々。
 少し前ならば、彼らはただの研究員として利用する道を選んだだろう。
 だが、今のルルーシュにはそんな選択はありえなかった。
 何故無関係に等しい彼女が殺されたというのに、ギアスの研究者達が生きることを許さなければならない。
 そうとでも、言いたげに。
 彼は告げる。

「ポイントα-7を包囲しつつ、この場にいる全てのものを殺せ!!」

 それはいつだったか、彼の義兄が下した虐殺命令。
 

 そんな救いは、救いじゃないよ。ルルだって傷ついてるのに。
 お願いだからやめてやめて、お願いやめて。
 私こんな風にルルに誰も殺して欲しくなんて、ないのに。
 ロロだって、ルルが大切だからなんだよ。お願い気がついて。
 お願い、お願いだから。


「殺してやる殺してやる。ロロ、お前も、ギアス、この力も! これが孤独を生む王の力だとしても、シャーリーは関係なかった。彼女は関係なかったんだ。父親を俺に殺されて、彼女の命まで、俺のせいで……ッ!」

 殺してやる殺してやる殺してやる。

 憎悪に身を浸からせて、暗く輝くのが紫電の瞳。

 やさしく光を放っていた瞳は、今、あまりにも暗く昏い。

 もうこれ以上殺さないで。私のためをその唇で告げるなら、お願いだから殺さないで。
 恨んでなんかいないの、憎んでなんかいないの。
 それよりも、あなたがそうやってまた誰かを憎んで、世界を恨んで、そうして人を殺す道をまっすぐに突き進んでしまうことのほうが悲しい。
 お願い、気づいて。
 私はこんなこと、望んでないよぉ………ッ!
 こんなことされたって、喜べないよ、うれしくなんて、ないよぉ………!!



 憎悪を滾らせ、黒と金の機体は空を地下を翔る。
 かつてから今にかけて、己が心底より憎んでいるブリタニアと同じ所業だと気づくこともしないで。
 彼はまた、その道を血で汚していく。



***
 R2の14話って、ルルとスザクが自身の主義を貫けなかった、自ら自らの主義を曲げて憎悪に走った、っていう話ですよね……。
 スザクがルルを売った時といい、本当ユフィとかシャーリーとか、泣くよ。あの子らに命で命の贖いとか、そういう発想あるわけないのに暴走してくれるなよ頼むから。と思ってしまいます……。 


果たして救われた者はいたのだろうか




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