忘れてしまっていた。 忘れてはいけなかったのに。 忘れてしまっていた。 いいえ、忘れさせられていた。そのほうが、私の心が安らかになると。 私の心は救われると。 あなたが思ってくれたから。 夕日のロープウェイ。 突きつけられた、手ひどい真実は現実という名前がついていた。 突きつけた銃口。外れた銃弾。 崩れ落ちたわたし。 抱きしめてくれたあなた。 優しいあなたは、わたしを守ってくれた。 お父さんをゼロに奪われた。お父さんをテロに巻き込んだひとを、何も知らない私は平気で非難する。 お父さんを殺された私のために、みんながその通りだとうなずいてくれる。 あなたは、私を守ってくれた。 例え、私がどれほど卑怯な手であなたに近づいても。 だから今度は、私が守りたいの。 ねぇ、ルル。わたし、ルルが好き。 優しいルルが好き。 わたしを守るために、わたしの中からあなたを殺したあなたが好き。 全部全部、許してくれたルル。 全部全部、許してしまったルル。 ねぇ、ルル。大好き。 「教えて」 あなたが許せないのは、なに? ルルがゼロだということ? ルルがユーフェミア様を殺したということ? 「僕は………」 ルルに騙されていたということ? ルルが騙していたということ? 許せないのは誰? 「スザクくんは、ルルの味方にはなってあげられない?」 ナイト・オブ・ラウンズだから? それとも、ルルがゼロだから? あなたは誰? ナイト・オブ・ラウンズである前に。 一人の人間として、あなたはどうしてルルを赦したくないの? 「私は、とっくにルルを赦してる」 ひどい娘だね、ごめんねお父さん。 最低だよね、ごめんねお母さん。 それでも。 何度だって、好きになったひとのことを憎むなんて。 出来はしないの。 もうこれって、運命みたいじゃない? 滝にだって飛び込めるパワー。 世界はきっと単純なことでも分けることが可能なの。 例えば、ルルが前に言っていた家の関係で引き離されるかどうかの二人のように。 想いには、世界を変えちゃうすごいパワーがあるんだよ。 誰かを憎んでいられるのって、きっとすごく楽。 だって、全部その人のせいだ! って、しちゃっていられる。 そうしたら、全部全部自分は悪くないって言っていられる。 それって、なんだかおかしいけど。 でも、それが通用しちゃえばこんなに楽なことってない。 ねぇ。 世界より心は重いけれど。本当にそれは、変えられないもの? 本当にそれは、赦せないから赦さないもの? ねぇ。 あなたはほんとうは、なにをゆるせていないままなの? あなたはほんとうは、だれをゆるしたくないの? 「私、ルルが好き。大好き」 ねぇ、ルル。 全部赦してくれたあなた。 あなたの全部で、わたしを守ってくれたあなた。 だからわたしも、全部ゆるしてしまおう。 だからわたしが、今度はあなたを守ろう。 嗚呼だからほら、泣かないで。悲しまないで。 ねぇ、もし、生まれ変わるとしても、 *** しゃーりー………orz ルルに赦されてしまったのは、彼女もスザクも同じだと思います。 |