爽やかに晴天を仰ぐ。
 足元には、最早残骸とも呼べぬKMFの成れの果てが転がっていた。
 薄く上がる白い煙は、焦げた匂いを漂わせている。
 エリアいくつめかがここに成立したわけだが、スザクは最早覚えていない。
 一年の間に、激戦地にいくつも回った。
 それでも、仰ぐ空は変わりがないのだから。
 吐いた息を耳にしたのだろう、ジノが足を止めて身体ごと振り向いてきた。
「どしたー? スザク」
「いや。天気良いと思って」
「だよなー。あー、遠出してー。イゾルデのやつも、久しぶりに構ってやらないと機嫌悪くするだろうし」
 ぐい、と伸びをして言う同僚の言葉に、少しだけスザクも笑ってしまう。
 ヴァインベルグ家は、ブリタニアの中でも有力貴族だ。
 必然、乗馬やダンス、音楽の教養は必須項目。
 中でも乗馬は、ただ名家の子息として嗜んでいるだけではなく趣味として選んでいるものだということを知っている。
「いいね。僕もちゃんとそういうこと、学んでおけば良かった」
 ナイト・オブ・ラウンズの一席であろうと、所詮は名誉ブリタニア人。
 社交界においては、護衛としてすら同席を許可されないがそれでも会話をする人間は地位が上がることによって必然的に増えてきた。
 話術は、上位の人間として必要不可欠なスキルだ。
 ただ純粋なだけでは、ただ戦闘能力が高いだけでは、罷り通れぬのが貴族社会。
 今更ながらの言葉に、呆れ半分彼らしいという感想半分でジノは笑った。
「スザクって、嫌われんの猫だけ?」
「アーサーのことかい? あれでも最近は懐いてくれてるんだよ」
「………あれでかよ」
「うん。前は毎回噛まれてたけど、今は一日五回くらいに減ったから」
 あっさり頷く相手に対し、微妙な色を浮かべてからそれでも可笑しそうに金髪を揺らして笑う。
 何故そんな表情なのか、わからないのだろう。
 小首を傾ぐスザクに、バンバンと派手に背中を叩いて気にするなと告げた。
「今度俺のイゾルデにも、会わせてやるよ」
「楽しみだなぁ。学校に通わせて貰っていた時、乗馬の授業もあったけどあんまり乗れなかったんだ」
 クラス一人ひとりに合わせて馬を用意するには、A.F.学園の敷地は足りない。
 ゆえに、少人数を短い時間で一頭に配しローテーションで触れ合っていくしかなかった。
 そもそも、A.F.学園の生徒達はそのほとんどが名家の子息子女である。
 既に十代も半ばを過ぎた彼らに馬は馴染みのあるもので、むしろその感覚を忘れないようにするために授業として触れ合わせていた色が強い。
「あ、乗るのは駄目な。あれは俺のオンナだから」
 ひとを選ぶ生き物ゆえに、一人と決めたらそれ以外は振り落とす馬は実際少なくない。
 ジノの愛馬、イゾルデもその類なようで、直ぐにぱたぱたと手を振った。
「そっかぁ。残念」
「美人を拝めるだけで、満足だろ!」
「言うなぁ、本当」
 楽しげに笑いながら、スザクとジノは連れ立って歩いていった。
 彼らの会話は、いたって平和で。平穏で。
 場にまるでそぐわなかったけれど、だから余計にこれが彼らの日常なのだと。
 ひどく、納得させてしまうようだった。



***
 単純に、ジノの愛馬がイゾルデだったら。というのを出したかっただけです。←
 ヴァインベルグ家の爵位が知りたい………orz
 人殺して壊すのが日常なラウンズ二人。枢木さん、あなたの正義がわかりません。


ランチはサンドウィッチで




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