ミレイは、笑うしかなかった。
 ブラックリベリオン事件以降、彼女は奪われてばかりだ。
 安息の学園内も。
 大事な幼馴染も。
 大切な妹姫も。
 大切な兄皇子も。
 奪われてばかりだ。
 嗚呼、と、ため息をつきながら窓の外を見やる。
 後悔ばかりが、先んじて仕方が無い。どうしてばかりが、毎日毎晩毎朝―――常に頭の隅を埋めている。
 空が青い、空が高い。
 けれど閉塞感があるのは、何故だろう。
 望んで作り出した箱庭だった、はずなのに。
 こんなことを、望んでいたのかと。項垂れた。
 だが、彼女はこんな表情を浮かべてはいけないのだ。
 ミレイ・アッシュフォードは、こんな表情を浮かべないのだから。
 いつだって、明るく笑っているのだから。
 だから、彼女は顔を上げた。
 頑張って微笑みを浮かべる。
「―――いよぉっし!!」
 ドアの前で、頬をぱちんと叩いた。
 自分は、ミレイ・アッシュフォード。
 お祭り好きで騒がしい、アッシュフォード学園の会長様。
 そうでなければ、いけないのだから。
 朝食を軽く済ませ、足早に生徒会室へ向かう。
 居住区になっているはずのそこは、完璧なバリアフリー。
 その理由を、既にゲストハウスの主は忘れてしまっているのだけれど。
「おはようございます、会長」
「えぇ。おはよう、ルルちゃん」
 彼女は笑う。
 明るく。
「おはようございます、会長さん」
「はぁい。ロロちゃんもおはよ」
 ひらひら軽く手を振って、視線を移した書類の山に苦い顔を浮かべてみせた。
 山。
 昨日も片付けたはずなのに、山。
 嗚呼、書類の山。
「ルルちゃぁああああん、これなんなのぉ?」
「書類ですよ? 会長が溜め込んだ」
「昨日もやったじゃない!」
「昨日の分は、昨日の分。ですよ。ロロも手伝ってくれる、って言ってますから」
「さっすがロロちゃん!」
「まったく、年下に甘えて。いいんですか? 会長?」
「いいのよぉ。それに、ルルちゃんとは学年一緒じゃないの」
「留年して生徒会長なんて、聞いたことがない」
 肩を竦めるルルーシュに、矢張りミレイは苦笑を浮かべるだけにした。
 留年なんて、そんなもの。
 彼の傍に、いたいがための方便でしかない。
 以前のルルーシュならば、気づいたはずのいくつかのことを。
 彼は、完璧なほどに忘れていた。
 ロロへと、視線をやる。
 どこか申し訳ない様子で、けれどしっかりとルルーシュの傍に居た。
 離れる様子が皆無なら、お茶を入れて作業をするのは自分の仕事だろう。
 思って、紅茶を入れる旨のみを告げ席を立った。
 楽しそうに話をするルルーシュとロロは、正直見ていて気分が良くなるものではない。
 ブラックリベリオン事件以降、アッシュフォード学園には軍の立ち入りが多くなった。
 けれど、半年経ち一年経ち、ようやくそれも緩和されてきた。
 ようやく、元の形に戻りつつあるようにも思えてきた。
 だが、決定的に違うことがある以上。
 ミレイには、ここはもう箱庭と感じられなくなってしまっていた。
 愛しいひとたちを、守るためだった箱庭なのに。
 監獄に感じてしまうのは、どういう理由。
 容姿も口調も、あまりにも彼の少女に似ているロロ。
 弟に過保護に接する全てがズレて摩り替わっている、ルルーシュ。
 遅れて、そろそろリヴァルやシャーリーが来ることだろう。
 元の生徒会に、どこまでも近いはずなのに。
 こんなものは望んでいないと、キッチンで彼女は頭を抱えて嘆いていた。



***
 なんとなく、洗脳されていたらネタが個人的にありえるかなぁとか色々考えたんでこれで進んでみる。
 R2出るまでの暴挙ですよ……!!(吐血
 


それでも私は笑うだけ、




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