真っ赤な髪の少女が、全ての感情を飲み下した顔で笑う。 仕方がない、赦せない? 嗚呼もうそんなもの、どうだって、よくて。 もう、いいのだと。 晴れやかに。 「ほら。なにしてるの、ゼロ!」 あなたが往かなければならないのは、こんな風に立ち止まることを赦す道ではないのだから。 だから、歩かないと駄目じゃないの。 そう言って、少女は裏切りも偽りも全て飲み下すようにして笑った。 いつかの妹を思い出させるような、明るい笑顔に。 救われたのだと素直に言えば、彼女は怒るだろうか。 試したことは、まだない。 「………いやさ、いーんだ別に」 A.F.学園で、一番の被害者はニーナであり。 一番事情をすばやく察したのは、ミレイであり。 一番早く立ち直ったのは、リヴァルであり。 一番未だに煮え切らぬ態度を示すのは、シャーリーであった。 ニーナが核のスイッチをいれる前に、ことなきを得たのはなんでもない。 単純に、興奮状態による過呼吸を引き起こし、失神したせいである。 その間にラクシャータが彼女の手から物騒なスイッチを引き剥がした、ということだ。 そんなごたごたをしている間にA.F.学園はブリタニア軍に制圧されてしまい、全ては水泡が弾けるより淡く終わった。 とはいえ、主犯であるゼロはこうして堂々と学校に通っているしその親衛隊長となり直属であったカレンも何事もないように学校に通って いる。 もっとも、今回のことは公に露見することは避けられたもののシュタットフェルト家の義母はこれ幸いと縁を切ってくれたが。 こうして学園に通えているのは、アッシュフォード家が保護を名乗り出てくれたことと、家に帰らずカレンの母が服役ということになるまで 放ることになってしまった彼女の父親がせめてと学園に残れるよう尽力してくれたためだ。 感謝の欠片も感じない父親だったが、この件に関してのみをいうなら多少のありがたみを感じる。 「なによ、リヴァル」 既に猫をかぶっている必要は無い。 ならばと、カレンは堂々と地の性格を露にしていた。 何とはなしにわかっていたミレイとは違い、欠片も気づいていなかったリヴァルには正しく晴天の霹靂だっただろう。 もっとも、ここ最近は慣れたものだが。 「いやさ? 一応学内で、俺も会長もいるんだから、もーちょっと自重した会話が欲しいなぁ、って思っただけー」 「仕方ないでしょう。時間はいくらあっても足りないんだもの」 「そんなに危険なことは言ってないしな」 頷きあうテロリスト二人に、リヴァルは机と仲良くなった。 さめざめと嘆く姿を、ミレイが楽しそうにみやる。 「元会長としても、物騒な会話は控えて欲しいわぁ。……で、その作戦って時間かかる?」 「一晩じゃきかない………わよね?」 「準備段階と、武器の手配を含めると軍に悟られてからも二週間はかかりますね。どうかしました?」 「いや、そうするとうちの旦那帰ってこないから。楽でいいのよ〜〜」 かんらかんらと笑うミレイに、思わずのようにカレンが口を開いた。 「ミレイさん、いい言葉が日本にありますよ」 「え? なになに?」 「『亭主元気で留守がいい』」 言い切った後に、腹を抱えて笑い出せば金糸の髪がひらひらと揺れた。 「ナイスだわ。それ」 ひーひーと苦しげに笑うミレイは、本心から楽しそうだった。 彼女の夫は、軍部につめている研究者だ。 ランスロットの情報を貰うことはミレイの安全も慮りしていないが、時折こうして情報を漏らしては生徒会室で話題にされている。 全てはこの部屋だから赦されることであった。 「ねぇ、ゼロ」 「なんだ」 「今度こそ、日本を取り戻すの協力してね」 「………」 「そうしたら、今度は私があなたのお母様を殺した犯人、見つけ出して八つ裂きにするから」 母を一方的な存在によって奪われた経験のある少女は、一瞬だけ剣呑な色を瞳に点らせた。 今度こそ、の重みを、ルルーシュは噛み締める。 噛み締めた奥歯を緩められぬまま、口元だけに幼い笑みを浮かべた。 「カレン」 「なによ」 「次の作戦、お前が切り込み隊長な」 「任されたわ!」 約束する。 勿論だ。 二度と持ち場を離れたりしない。 なんて、言葉は使わずに。 ただ、それだけを告げた。 次の作戦概要をノートPCで確認しながら進めていく二人を見て、思わずリヴァルはミレイに視線をやった。 すぐに視線に気付いた彼女は、楽しそうに笑っている。 物騒な二人の会話は、けれど邪魔されることなく続いていった。 二週間後のニュースを楽しみにする。 きっと、紅い機体が先陣を舞っているだろうと、予想して。 *** りくえすとあんけーとより、AIZ様よりいただいたので書かせて頂きました! ………もうちょっとこう、なかったのかなぁな感じになってしまいましたが、放課後生徒会室でテロ活動の懸案まとめている二人でした。 |