だからそれはきっと夢物語にも満たない。 合衆国日本は、成立と同時に滅び。 黒の騎士団は、破滅と壊滅を負い。 NACは、その両手両足をもがれた形となって。 ニッポンは、相変わらずエリア11としての姿をいく。 混乱の世界に、けれどブリタニアは燦然と輝いて。 シュナイゼルはその辣腕ぶりと、擁していた特派の功績により地位を更に確たるものとし。 コーネリアは、亡くなった己が騎士と妹を胸に抱きながら新たなエリアの開拓、制定に余念が無い。 世界は廻る。 回転し、廻転する。 「すっかり落ち着いちゃったわねぇ」 午後のひと時に落ちた言葉を、聞いたのはナナリーだけだった。 当然だ。 ここは、アッシュフォードが本国に構える邸宅のひとつ。 郊外に置かれたこの屋敷は、別荘としてではなく、ただナナリーという一人の少女を守るために築かれた新しいアッシュフォードの箱庭だった。 エリア11の箱庭に、流石にいるわけにはいかないとした彼らの判断は正しいだろう。 あの後いっせいに行われた寮内の探索で、幾人か黒の騎士団の協力者らしき人物たちが挙げられた。 連行していかれた先を、ミレイも知らない。 そんなところにいてしまえば、ナナリーの素性がバレることなど時間の問題。 否、むしろ現状はただの温情で、既にばれているかもしれない。 可能性の話だが、否定要素は少なかった。 「世界が、ですか?」 「えぇ。あんなに大騒ぎしたのに」 エリア11、否、日本を巻き込んで。 世界があれほど、混乱したようにみえたのに。 ゼロの死により、それも収束してしまった。 祭りの後のむなしさが、胸に宿る。 それでも。 「―――お兄様は。まだ、見つかられていないんですよね……」 「えぇ。リヴァルに連絡があったのが最後。……ごめんなさいね。大っぴらに探せなくて……」 「いいえ。そういう私達を、こんなにも守ってくださっている。それだけで、十分です。ミレイさん」 ミルクティ色の髪を揺らして、ナナリーは微笑んだ。 顔色は、良いとは言えない。 ミレイ自身、彼が黒の騎士団、しかもかなり中枢に食い込んでいただろうことは予想している。 だが、そこからは見事に足取りが消えていた。 そういった、人の目から逃れる方法を教えたのはマリアンヌでありアッシュフォードでもあるので、この場合自分達を褒めるべきか活用しまくってくれる彼を怒りつつも褒めるべきか、微妙なところだ。 「スザクは、そういえば今日は早いんだったかしら」 「はい。お忙しいようでしたから、無理しないでください。って、言ったんですけど」 「ま。今のスザクには、ナナちゃん、って支えが必要なんでしょ」 「私が支えていただいているんですよ……?」 咲世子も気づけば消えていて、兄も行方不明。 見かねてミレイが傍にずっといてくれるけれど、彼女とて伯爵夫人の身。 しょっちゅう、ナナリーの傍にいるわけにはいかない。 そんな中、彼女の新しい後見人となったスザクは軍務があるにも関わらず出来る限りこの屋敷に戻って儚い少女のために細心していた。 「自分のためでも、あるのよ。あれは」 「………」 仕方なさそうに、ミレイが苦笑した。 文字通り苦い表情なのは、彼が仕えていた主の所業と末路を知ったためか。 スザクの立場は、ゼロを殺害したということを差し引いても決して良くは無い。 コーネリアの必死の擁護、アスプルンド家の後ろ盾、シュナイゼルの監視下。 あらゆる力によって、ようやく首の皮一枚がつながっている状況だ。 今の状況は、あくまでも応急処置でしかない。 いつ、どう、世界が動くか。それはもう、ここしばらくの事態でよくよく思い知った。 眉間に皺が寄る。 こんなことの先読みばかりが上手い、少女の兄に猛烈に会いたかった。 *** 無意味にちょっと長いのを出してみる。連載のはずが、さくさく終わりました。 ・・・あれ? |