虹色らぷそでぃ




 あからさまに苛立つ相手を見て、生徒会メンバー全員は目を丸めた。
 ルルーシュがこういった態度であるならば、珍しくは無い。
 顔に出さないようでいて、隠す必要のないことに関して彼は素直だ。
 割と露骨に顔に出す。
 ミレイやシャーリー、ニーナもそういった意味で論外だった。
 女子には女子のコミュニティがあるが、そういった類に彼女らは属しているようで属していない。
 必然的に、そこでなんらかのストレスを与えられることはない。
 ただ、それでも腹に据えかねることはあるのかそういった場合はお昼休みに愚痴りあいをしている。
 一番意外な人物、とでもいうべきか。
「めっずらしいわねー」
 リヴァルの、不機嫌そうな顔だった。
 オーラからして、近づくな、不機嫌だと述べている。
「なんかあったか、聞くべきかしら?」
「やめておいたほうが無難じゃないですか。触られたくないことって、あるでしょう」
「それもそうね」
 ミレイとルルーシュは一言二言交し合うと、それだけで書類に戻った。
 なにも、彼をないがしろにしているわけではない。
 ただ、今言ったように触れられたくないことはあるのだということを、理解しているだけである。
「こんにちは! 遅くなってごめん!」
 生徒会室が奇妙な静けさを宿したまま、黙々と書類仕事を続けていた空気を破るように、スザクが駆け込んできた。
 軍の仕事から直接来たのだろう。
 手に鞄は無く、本当に制服に着替えただけ。という風体だった。
「やぁやぁスザク。重役出勤じゃのう」
 ミレイが笑って、書類を幾枚か抜き出す。
 これで、彼女は優秀であり有能だった。
 任せて大丈夫なレベルをわきまえているのだから、流石である。
「重役出勤どころか、就業時間終わっている感じですけどね」
 ルルーシュが皮肉げに言うが、スザクは気にしなかった。
 実際、今はすでに放課の時間である。
「………あれ?」
 笑いながら書類を受け取り、いざ。となった時点で、首をかしぎ。
「リヴァル、なんだか機嫌悪い?」
 見事に彼は地雷を踏み抜いた。
 シャーリーやニーナでさえ、驚くような顔色を浮かべ。
 ルルーシュとミレイは、片手に顔を埋めている。
 だが、気づくことなくスザクは首を傾けたまま「どうしたの?」と問いかけた。
「………なんでもない」
 短く言うのが、彼の精一杯だったのだろう。
 そうとだけ切り返し、黙々と作業に戻る。
 再度なにかを発しかけたスザクの足を、ルルーシュが机の下で問答無用の勢いのまま踏み拉かなければ、更に空気は凍えただろう。
 思わずのように、ミレイは親指を立てていた。
 こんなところで褒められても、欠片もうれしくないというものだ。
「スザク。場の空気を読め。雰囲気を読め、悟るという行動に少しは出ろ」
 それ自体、本来ならば自然と出来ることなのだろうが。
 ルルーシュは、いくら性格がおとなしくなったとはいえ彼の性根の性格を知っていた。
 故に、口に出していったのだ。
 でなければ、理解出来まい。
「え、でも」
「言われなきゃわからないなんて子どもの言い訳、通用しない」
 先手を打って語を封じれば、スザクも押し黙る。
 よし。
 としみじみ頷いて、ルルーシュは視線を注いでくるリヴァルに向き直った。
「………わり。」
 ぽつ。とこぼす言葉に、会長をはじめとした全員が首を横にする。
 人間だ。思春期だ。
 不機嫌になる要素など、どこにでも転がっている。
「なーんかさー……。ヤだよなぁ、色々」
「飽きているなら、久しぶりに行くか?」
「いいのかよ」
 暗に告げられた賭けチェスの誘いに、リヴァルは眼を瞬いた。
 暫くの間、忙しいからと予定を入れないように言われたのは記憶に新しい。
 それを示すように言えば、ルルーシュは軽く肩を竦める。
「最近、ご無沙汰だったからな。お詫びに付き合うさ」
「おっ! やさしいじゃん。ルルーシュ」
「こらーーー! なに堂々と言ってるのよ! 二人とも!!」
「……堂々としていなければ、いいらしいぞ」
「そういう問題じゃないの!」
 シャーリーの怒る声に、かんらかんらとミレイが笑った。
 ふと。和らぐような生徒会室の空気。
 スザクが見渡せば、仕方のなさそうな顔でルルーシュが。場が和らいだことにニーナが。
 怒ったようにシャーリーが、その様子を眺めてミレイが。
 思い思いに、表情を浮かべていた。
 室内は平和そのものと、言いたげだった。



***
 書きたかったのは不機嫌なリヴァル。
 平和な学園パートは常にいとしいです。






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