盗掘者の命題




「ルルーシュが帰ってくるの!」
 おひめさまが喜んだ。

「ルルーシュが戻ってくるらしい」
 戦場の女神が微笑んだ。

「ルルーシュが戻ってくるというのは本当か!」
 絵描きもどきが驚いた。

「ルルーシュが此方に来るようだね」
 帝国の宰相が笑った。

「アレが戻るか」
 支配者は頷いた。

「ルルーシュ様を奪われた」
 宝箱の鍵は怒った。

「ルルーシュがいなくなる」
 花の少女に感慨はない。

「ルルーシュがどっか行っちまうのかー」
 悪友は残念がった。

「ルルーシュくん、が」
 頭脳明晰な少女に特段感想はない。

「ルルーシュ君って?」
 黄昏の少女は忘れている。

「ルルーシュ様とナナリー様についていきますわ」
 侍女は静かに微笑んだ。

「お兄様がそうお決めになったのなら」
 盲目の少女は覚悟を決めた。

「私からルルーシュを持って行くとはいい度胸だ」
 灰色の魔女は冷笑した。

「ルルーシュがユーフェミア様のもとへ帰ることが一番だよ」
 白い騎士は全肯定した。



 それが一番安全だよ。
 言いながら、スザクの表情は決して明るくない。
 それでも、それが最善なのだと信じているのだろう。
 見つめる瞳に、躊躇いはないようだった。
「その言葉は正しくない」
「どうして。君は」
「きっと、こんな気持ちなんだろうな。ピラミッドに眠るファラオは」
「……え」
「叩き起こされて。世界に無理に連れ出される」
 それがどれだけ貴重な扱いを受けようと。
 後の民に、有益な情報を残そうと。
 死人はただ、眠るだけであったのに。
「お前は、ファラオにとっての学者であるに違いない。悪意がない分、なおタチが悪い」
 冷徹な紫の瞳が、嘲りを宿す。
 良いと思ってなされたことが、結果良いことだった。
 それは、そうかもしれないけれど。
 見方を変えれば、それは本当に良いことだった?
「俺は眠ったままでも、良かったよ。スザク」
 無理に世界に連れ出されたファラオのミイラ。
 見世物になるために、世を再度見ることを強要された死人。
 吐き気を覚えそうな嫌悪感と戦いながら。
 ルルーシュは、もはや世界を見るのをやめていた。



***
 スザクは自分の行動が全部正しいと思っているから怖い。
 なんというか感覚的です。謎時間。





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