ただいまの先に、




 アヴァロンへ帰還すれば、そこに待っていたのは矢張りおかえり、と迎えてくれる人たちだった。
 通信は切っていたけれど、帰る道すがらに口頭報告だけは済ませている。
 事情の通じた相手は、ランスロットから降りると同時に笑う様子をそのまま向けていた。
 それを、どこか遠くのことと感じてしまうほど。
 疲労感は、濃い。
「ゼロを撃った、ね。おーめーでーとぉ〜〜〜〜」
「………」
「おや? 暗い顔。大丈夫かい?」
「えぇ、まぁ。問題ありません」
「そっか。じゃあ、スザクくんはこっち」
 ちょいちょいと手招かれて、ふらふらになりながら歩いていく。
 休みたかったけれど。
 でも、報告書だって書かなければいけない。
 そうだ。ゼロの正体を、文書に現さなければ………ガチャン。
 意識を他へ持っていっていたせいか、気付くのに一瞬の時を要した。
 ガチャン?
 首を傾ぎ、手元を見やる。
 輪っかが二つ。色は銀色。どこからどう見ても、手錠である。
「へ?」
 思わず顔を上げた。
 そこには、普段どおりのロイドとセシル。
 もう一度手錠を見やり、顔を上げる。
「え、っと、これは………」
「ごめんなさいね、スザクくん」
 苦笑まじりに困った表情のセシルだが、謝られてもなにがとしか言いようがない。
 拘束することを、だろうか。
 何故。
 理由が見当たらない。
「あのねー。君、勝手にランスロット発進したでしょ? 出撃命令出てないのに」
「でも、それは………」
「おまけに、起動キー僕から奪ってっちゃったでしょ? しかも僕のこと殴って」
「………その節は、どうもすみません……」
「上官に手ェあげちゃいけないのは、わかってるね? 勝手な行動しちゃいけないもわかってるね? 軍って言うのは、規律を守ってなんぼだから。たとえ君が英雄的働きをしようと、主の仇を討つために独断専行しようと、規則は規則だから。守らないひとには、相応の処分が必要なんだ。対外的にも」
 と、いうわけで。
「重営倉とまではいわないけど、アヴァロンの営倉入り決定〜。おーめーでーとぉ〜。ちゃんとご飯はあるから、その心配はしなくて良いから」
「大丈夫よ、私がちゃんと作って持っていくから」
 同情的な視線だけれど、営倉入りよりももっと恐ろしい続いた言葉にスザクは蒼褪める。
「せ、セシルさんが作るんですか………?」
「えぇ。安心して。ゼロを討った功労者だもの。腕によりをかけて作るから!」
 はりきっている彼女には申し訳ないけれど、出来ることならば全力で辞退したい。
 朗らかで、穏やかで、優しげで。
 ただいまと言いなさい、と、言ってくれた優しい女性。
 恩義は感じる、食事を作ってくれるのも、ありがたいと思う。
 けれど、けれど、あの殺人的に味覚破壊の料理を耐え切る自身が、今は無い………!
 いいです、インスタントものください。
 今なら冷えたインスタントカレーだって食べられます。
 そう言えない自分の性格が、今はひたすらに恨めしい。
 嗚呼、これが友人を疑った罰か。
 予想だにしなかった展開に、スザクはただ息を飲むしかなかった。


***
 軍人ですから。(其の一言で済ませようとするな





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