銃口を向け合う。 さようなら、はじめての友人となったひと。 疑われるような真似を、し続けた自分のミス。 ギアスはもう通じない。 生きて欲しいと願ってしまった。これがその結果。 ・・・。 「て、おい待てスザク」 「なんだい」 冷徹な声に、けれどこれを確認しておかなければ死んでも死に切れない思いが高まってくる。 「お前、ギアスを知っていたな」 「教えてもらったからね」 「誰にだ」 「え?」 「ギアスの存在を知っている奴なんて、早々いない。俺でさえ、ギアスの存在を知る者は魔女ともう一人だけだ」 そう。 ギアスは、特殊な力、異質の力。 ゆえに、そう口に出されるものではない。 ギアスという名称でさえ、先ず耳にしないというのに。 この男は、一体どこから情報を得た? 「え、えっと、アヴァロンにいた子どもに………」 「アヴァロンに?」 「そう。ユフィが死んで、しまった時に、現れて………」 「何処から」 「え」 「あのな、作戦行動中に軍の戦艦に子どもがいるなんて、ありえないだろう。どこから出てきたんだ」 「いや。普通に後ろにいてね?」 「………」 「あれ? そういえばあの子、どこの子なんだろう」 小首を傾ぐ相手に、拳を握る。 嗚呼、嗚呼、もうこの男は………! 「莫迦かお前! そんな得体の知れない相手の言葉を鵜呑みにして、わざわざ来たのか?! 俺がゼロだったから、それは正しいとはいえ そう簡単に他人を信じるなといつも言っているだろう! 疑う役の俺がいないんだから、きちんと警戒をしろ警戒を! いくらマシンガンを目視 で避けられるとはいえ、限界があるだろう! ヴァリスクラスの砲撃を受けるようなことになっても生きていられるのか?! そんなに素晴らしい 反射神経をお持ちか貴様! そうだったらもう、俺のギアスよりタチ悪いぞ。大体、そんな怪しい相手を主君の亡骸に近づけるなんて騎士失格 だ! 子ども時代からやり直せと言いたいところだが、七年前はもっと乱暴だったからな。いっそ前世からやり直せ!」 あまりに一気に言われたものだから、思わず、スザクの動きが止まる。 反射的に謝ってしまうが、それさえルルーシュを怒らせるものだったらしい。 「え、えっと、ごめんなさい」 「俺に謝ってどうする! いいか、お前はひとが良すぎる。七年前のあの事件のせいなんだろうが、それにしたって滅私奉公なんてしたところで ブリタニアはそういう日本の精神がわからないんだから、成り上がるつもりでいかなければ潰されるぞ。俺を疑えたのは立派だが、どうして 俺限定なんだ。情報は世界に溢れている、それをちゃんと把握、掌握、理解し、行動に活用できるくらいに頭を使え頭を。その首振ってカラカラ 音がしても、俺は驚かないぞ」 「いくらなんでも、ちょっとそれ言いすぎじゃない?!」 「いきなり背後に現れてそんなトンでもなことを言い出した子どもの言葉を鵜呑みにした莫迦には言われたくない!!」 きっぱりノンブレスで言われ、思わずスザクが後ずさる。 そう考えれば、相当怪しい。 「それで、そいつの名前は?」 「なんていったっけ………、えっと、V.V.、だった、かな?」 「………あの女の親戚か………!」 低く呻くように呟いて、ルルーシュはマントを翻す。 「ひとつ言っておく。俺がここにきたのはな、共犯者にして我が魔女、C.C.が、ナナリーが浚われたと言ったからだ。いきなり、ナナリーが浚われ たと言い、理由は自分にはわかるから。だった。親戚同士、なんらかのものが繋がっているのだろうな。というわけで、問題だ。スザク。ナナリー を浚った相手、一番可能性が高いのは誰だ?」 時間は三秒。遅い! 悩むなこの状況で!! やり直し! と繰り返され、わたわたと考えていたがやがてそろりと顔を上げられた。 「V.V.、っていう、子?」 「当たりだ。お前、ナナリーを浚った相手を信じるんだな。そういう奴なんだな、ふーん」 「ちょ、ま、そういう言い方する?! 君がギアスを持っているのは事実なんだろう?!」 「其の通りだ。だが、俺を疑い続けて、そんなトンでもな話を信じて、ナナリーを浚ったらしい相手を信じたんだろう? わざわざ空を見るなとか 確認の電話までしてきたくせに」 「それは………!」 「俺はナナリーを助けに行く。撃つならナナリーを保護してからにしろ、わかったな」 言うだけ言って、さっさか歩いていく。 遅ればせながら、気付いたように「待ってよ!」とスザクがその後を追った。 「ねぇ、私もう帰っていいかしら」 誰も居ない空間で、カレンは呟く。 なんかもう、丸投げしても大丈夫だと確信してしまった。 *** ギャグに走ってみる。 いやほらだって、なんで信じるのさあの状況でV.V.のことを。 |