利用という言葉を。 少なくともルルーシュは否定しない。 どちらにとっても、利のあることだったから。 日本の解放を望んでいた、イレヴンと呼ばれる日本人たち。 属国に自力で奪取された国家を作られれば、出て来ざるを得ない皇帝を引き摺りだしたいルルーシュ。 利害の一致は、していた。 だから、むしろわからないのだ。 何故カレンがここまで衝撃を受けているのか。 掠った銃弾に、耐えられるはずもなくルルーシュは銃を落とした。 スザクさえ、驚いて振り向く。 そこには、撃ったことを信じられないとするような赤い髪の少女の姿があった。 愕然とした表情で、震える腕は銃を水平に保たてている。 「あ、わたし、私………!」 じわじわと、染みが広がっていく。 黒衣をさらに深い色に染め上げていく。 「ルルーシュくん、なんで………」 その先の問いは、なんだろうか。 裏切ったという、ことか。 それとも、撃たれたということか。 少なくとも、後者ならば説明出来る。 簡単だ。 自分には、銃弾を目視で避けて回避するだけの能力は無い。 そう、KMFを降りた時から、決まっていた。 向き合ってしまえば、負ける事実。 白兵戦で勝てる見込みなど、欠片もなかったのだから。 「これで、お終いだ」 銃を突きつけられる。 笑うしかなかった。 「遺言も戯言も聞かない。君は世界を蔑ろにしすぎたから。だから世界に拒絶されるんだ」 「―――、」 世界に、拒絶される。 これがその気分の、何分の一かなのだろう。 少なくとも、あの魔女はずっと逃げ回って。世界から拒絶され続けて、いたのだから。 「スザク」 「君が俺の名を、口にするな」 「ハハっ。口調が元に戻っているぞ、懐かしい」 ガチ、と、引き金にかかる指に力が込められる。 「その穢い力を使って、逃げたらどうだい」 「何度も使えるような、器用なものでは。生憎ないんだよ、コレは」 赤い瞳を、そっと隠す。 花の少女を殺した瞳。きっと、彼の騎士には憎悪でしかないだろう。 「スザク」 「―――」 「嗚呼、では枢木スザク。ひとつ、言っておこう」 「―――」 「俺は、お前を疑わなかったよ。お前が技術部にいるのだから、大丈夫だと思っていた。お前を仲間にしたかった、お前と生きたかった、お前 は知っていたから。俺の、ブリタニアへの憎悪を」 知っていただろう。言ったはずだ、ブリタニアを壊すと。 それとも、忘れられてしまった? 七年の月日は長すぎた? 最早笑いしか出てこない、赤く赤く染まった瞳を隠して、ルルーシュは笑う。 「なぁ。それは俺だけだっ」 銃声が響く。 顔を上げたカレンの目の前で、壊れるように笑う主が倒れていく。 流動サクラダイトの爆発物など、彼はしないだろうという確信があった。 自分の命をベットにかけるような、そんな性格ではないことを知っていた。 だって、ナナリーがいる。 彼は死ぬわけには、いかなかった。 「―――スザク!!」 カレンの悲鳴が聞こえる。 けれど、構わなかった。 自分の命を救ったのは、七年前の記憶と。 再会してからも、変わらないその精神を知っていたから。 思い出と記憶に助けられて、ルルーシュは思い出と記憶に殺された。 音の響く、岩の中。 身動きがとれない男女が三人。 *** カレンがゼロを撃つのが一番展開上無理がないと思います。だってスザクは目視で避ける。 |