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爆発物を持った、興奮状態の少女。 ただの少女ならば良かったが、彼女はフレームに乗っていた。 下手に近づくことは出来ない。 この状況で、軍の命令に従わないのである。 正直、今すぐ銃殺してしまっても文句はどこからも出ないだろう。 少なくとも、あの爆弾が黒の騎士団に渡られるよりは余程マシだ。 だが、極度の興奮状態にいる彼女が銃を向けられたことに気付かずとも撃たれた衝撃でスイッチを押すことは十二分に考えられた。 結果的に、手をこまねいてみているしかない現状の出来上がりである。 「ラクシャータ、そっちからの狙撃はどうだい?」 『他の連中、みんな正面の軍にかかりっきり。どーしようもないわァ。ここ、アンタの仕切りに出来る?』 「んー。うち、出撃命令出てないんだよねぇ、申し訳ないんだけど。撤退を命令されることはあっても、仕切りは難しいかも」 『使えないプリンねぇ』 「失礼なこと言わないでくれる? ねぇ、ゼロは」 『雲隠れしちゃったァ。状況的にウチが勝ってたはずだから、逃げたわけじゃないはずだけど』 「いないの? もしかして」 『いたら、アンタと手ェ組んでどうにかしようとは思わないわね』 そりゃそうだ。とロイドは笑った。 ラクシャータと彼の相性と確執の悪さと深さは、折り紙つきである。 それでもこうして、手を組まなければいけない状況。 嗚呼、なんて反吐の出る。 思わず肩を竦めた。どうせ、相手も同じことを考えているのだろう。 「ニーナ。完成させたのはすごいと思うけど、それを手放しなさい。君の指先に、どれだけの人間の命がかかると思うんだい」 一応説得を試みてみる。 こんなことで、回避出来るならそれはなんともお手軽でご機嫌だ。 セシルとも回線を開きっぱなし、ラクシャータとも繋げっぱなし、外部スピーカーの五月蝿さに、けれど誰も反応しないのはこの状況が どれほど危険か全員肌身で感じ取っているからだろう。 『ごめんなさい、ロイド先生。でも………!』 言葉は震えていた。 謝罪が聞きたいわけでも、反省が聞きたいわけでも、理由が聞きたいわけでもない。 言いたいことはただ一つ。 その物騒なものを置いて(出来れば此方に引き渡して)、そしてとっととこのアヴァロンに収容されて欲しいだけだ。 いくら状況がより多くの兵力を必要としているからとはいえ、作戦行動中ではない、完全な独断。 あまり時間がないのは、防衛線をするしかない黒の騎士団も此方も同じである。 『ねぇ、ゼロはどこってさっきから聞いてるじゃない………!』 「ラクシャータ、本当にゼロの行方知らない?」 『生憎と。ガウェインに取り付けたセンサー、軒並み外しちゃってるし通信も駄目っぽいわね』 『今、この状況で?! 本当なの?! ラクシャータ』 『おかげで、今こっち大分パニックよォ? 潰すなら今のうちだけど?』 ついでに情報のリークでもすればいいんじゃないかと軽口を叩く女に、今は目の前のことを優先しようかと呆れてみる。 『ユーフェミア様の仇を、私が取るの! 私が、わたしが、わたしが、わたしが、わたしが………!』 繰り返すニーナの眼は、正気ではない。 昏い狂気で繰り返す姿に、正直相手をしたくないなぁ。なんて本音がぽろりと漏れる。 外部スピーカーを切って、同時にホットラインを繋げる。 「麻酔でプスっとやっちゃう?」 『いいわね、それ』 『学生相手になにを言ってるんですか、二人とも!』 セシルの意見は真っ当だが、この場合そうも言っていられない。 状況は、ブリタニア側が有利に傾き始めている。 アヴァロンは目立つ戦艦だ。いつまでも、この場を取り仕切ってはいられないし、三すくみ状態でいることも歓迎されないだろう。 『ゼロを出しなさいよぉ………!』 少女の絶叫。 科学者たちの思惑。 生徒達の恐怖に、黒の騎士団たちの困惑。 全ては夜に決着が着く。 そう、恐らく。 誰かが予測する、最悪の形で。 *** 学園都市部が、一番危険地帯と化している気がする現状について。 |