「ねーえ。ナナリー」 「なんですか」 「つまんないよ」 「そうですか」 「そっけないね」 「そうですか」 「ルルーシュの前では、そんなことないのに」 「そうですよ」 「どうして僕の前だと、そうなの? 僕は、仲良くなりたいのに」 つまらないよ。 繰り返す少年の言葉に、ナナリーこそが困る。 V.V.と名乗った少年は、C.C.に非常に気配が似ていた。 ほぼ同一であるといっても過言ではない。 だが、この少年は彼女よりも聊か礼儀や礼節を知らぬように思われた。 少なくとも、C.C.よりもマオと名乗った青年よりだろう。 嗚呼、どうして兄はこうも厄介なひとにばかり恵まれているのだろう。 人徳とはまた、違う気がする。 「ナナリー」 「はい」 「ルルーシュは、ひどいんだよ」 「そうですか」 矢張り素っ気無い言葉を返すしか、なかった。 ひどい、ひどいこと。 ひどいひと。 きっとその行動の原点には、自分がいるのだろうことは容易に予測がついた。 何故ならば、自分は彼の妹なのだから。 ずっと傍にいたのだから。 コーネリアよりも、ユーフェミアよりも、ミレイよりもシャーリーよりもニーナよりもカレンよりもC.C.よりも。 時間の密度が、長さに負けるなんてことを彼女は認めない。 ずっとずっと、傍にいたのだから。 結果、どれほど間違えても。 仮に兄を、拒絶することになっても。 その行動の原点には、自分がいる確信があった。 理由は、兄だから。証拠も、兄だから。 それだけで、充分過ぎるほど。 「ねぇ、ナナリー」 「はい」 「君はなにを願う?」 「………」 「ルルーシュの願いは、君の願い。君の願いは、ルルーシュの願い。でも、僕は君の願いを知らないんだ」 ねぇ。なにを願うの? 単調な声に、笑いもせずに伏せられた瞼の奥。 どこかを真っ直ぐに見つめて、少女は名言した。 「やさしいせかいになりますように」 今も昔も変わらない。 願いを否定すれば、兄がしてきてくれたことが無駄になるから。 だから少女も願いを曲げることは、出来ない。 望んだ一抹の平和と平穏。ちっぽけな願い。 嗚呼、遠くから足音。 銃声は、誰からのものだったのか。 今のナナリーに、知る術は無い。 *** あの展開で妄想差し挟む余裕がありませんごめんなさい。 |