かえしてください、 かえしてください、 私の母を、私の足を、私の兄を。 かえしてください、 かえしてください、 あなたがたが私から奪い取った、それら全てを。 かえしてください、 かえしてください、 返して頂けないというのなら。 私は奪い返します。 取り返すなど、生温い。 そのように生易しい心根は、最早私からは枯渇した。 ゆえに、 悲鳴と同時に、爆裂音。 炸裂したKMFが、周囲を巻き込む。 高らかに少女は笑うが、その笑みはどこも楽しそうではない。 恍惚の色も浮かべず、憎しみに全身を染め上げて、魔女は白く前を見据える。 「ナナリー」 同じ顔から、呼ばれる声に。 意識が引き戻されれば、彼女は車椅子の上に戻っていた。 「ナナリー。お兄様は生きてる」 無事かはわからないけれど、けれど必ず。 生きているから。 どうか希望を失わないで。 同じ顔の少女から言われて、首を小さく縦に動かした。 目の前の彼女は、嘘をつかない。 魔導兵器ネモ。 本来であれば土人形と同等の彼女は、現在ナナリーの負の心を食い物にして量子的にも安定した存在に成っている。 彼女には、嘘が無い。 ナナリーを守るといった言葉にも、嘘がないのはわかっていた。 だから、あらゆる意味で信頼している少女でもある。 ………もっとも、その凶暴性は、認めたくないものではあるのだけれど。 「お兄様………」 かしゃん。音を立てて、飾ってあった小さな置物が床に落下した。 手に届く範囲は、それしかなかったためか。 腕を棚に這わせてみたけれど、それで止まってしまう。 吐息をついて、破壊衝動をやり過ごした。 「お兄様、お兄様。どうぞご無事でいてください」 でなければ、私は壊れてしまいそうです。 兄がいなければ、不安衝動も破壊衝動もやり過ごすことは出来ない。 嗚呼、お兄様。 「ブリタニアを壊そう。ナナリー。そうしたら、お兄様もきっと帰ってきてくださる」 「えぇ。優しい世界に、なったらきっと」 お兄様が、今度こそ約束を守って一緒にお買い物に行ってくださる。 ―――だから。 壊してしまおう。私から奪い取った国を。 兄さえいてくれれば、もうなにも言う気のなかった私達を。 こうまで貶めた、ブリタニアを。 返してください、 返してください、 私の母を、私の足を、愛しい兄を、 返してください。 光は私の弱さというなら諦めます 動かぬ弱った足も無理というなら認めます 死人を生き返らせる法などないというなら頷きます ですからどうぞ、兄だけは 返してください、 返してください、 それさえ否というならば 私が全て奪い取る *** ナイトメアオブナナリーこみっくす発売記念。とか。 ナナリーの破壊衝動は、小説からですが。 ルルの立ち位置にナナリー、スザクの立ち位置にアリス、でしょうか。 |