その花が咲く頃にはきっと、




「何年後か、何十年後か、何百年後か」
 花畑は野原になって、草原になって、荒野になって。
 そして、また花畑になって。
 ひとがやってきて、去っていって。
 建物を建てて、それを打ち壊して。
 更地になって、雑草が生えて、荒地になって、それを誰かが直して。
 そうしてまた、花畑になって。
 それくらい、した後に。
「彼女の汚名は、雪がれるだろうか」
 血染めのユフィなんて名前ではなく。
 ある意味でとても正しくて(ただ、自分たちが望む世界にもブリタニアが望む世界にも)正しくなかった少女の。
 愚かな、愚直な、願いは。
 もう、土足で踏み躙られることがないように。
 なるだろうか。
 ならないだろうか。
 なって欲しいと、ルルーシュは呟く。
 祈るように、願うように。
「何十、何百年の先に。あの少女は、慈愛なんかじゃない、博愛なんかじゃない。皇族として、恐ろしくなにも出来なかった。お飾りだった。 なにかをしようと足掻くこともせず、持っているものを振りかざすだけだった。それが暴力ということも知らないでいた、無知を罪とも知らなかった。 ただ、かわいそうなかわいそうなかわいそうな、オヒメサマだと、知ることくらいは。あるかもしれないな」
「それでも、ずっとマシだ」
 血染めのユフィ。
 ブリタニアの、真実の魔女。
 姉のコーネリアとは、比較にならないほど。
 やり口は陰惨で陰湿。最低と言っても憚らない部類の、騙まし討ち。
―――それが本来の彼女ではなくても。したくないと嘆いても、絶対遵守の命令により、そうされてしまったとしても。
 世界で認められているのは、血染めのユフィ。
 返り血を浴び、死ねと笑顔でいったお姫様。
 本意でなかったことなど、自分が一番わかっている。
 けれど、利用しなければ共倒れ。自滅など、一番無意味だとわかっているのも自分だったから。
 利用した。
 後悔なんて無為なこと、絶対してやらないけれど。
「………、ここにある花が咲いて、萎れて散って、種になって、地面に落ちて」
 また、花が咲いて。
「その頃にはきっと、多少はな」
 足元には、無数の花。
 小さな花が、緑色の絨毯の中、ちらちらと咲き誇っている。
 もう直ぐ、ここはコンクリートで固められてしまう。
 だから、ここにある花は種となって飛んでいかない限りもう次世代を残すことは難しいだろう。
 恐ろしく時間がかかることだろう。
 けれど。
 それでも、希望は持っていたいのだと。
 絶望に突き落とし、突き落とされた少年は苦笑する。



***
 ユフィの汚名を雪ぐことは出来るのか。と考え、二百年後くらいならアリじゃないかと思いました。
 もしくは、千年単位。それまで、真実を知るのはルルとC.C.、ユフィだけなのでしょうけれど。(V.V.は考えません・ぉ





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