ひとは虫に似ている。というのが、ロイド・アスプルンドの主張である。 暗がりには、必ず灯をつけたがる。 点けた明かりに、人は寄っていく。 虫とどこが違うだろう。 酷薄な笑みで、ロイドはそう嘯く。 ヒトと虫の差異はなんだろうと、男は考える。 柔らかい薄藤色の髪を弄ってみたが、答えが出るとは思えない。 踏み潰したら、死んじゃうしなぁ。 言って仰ぐのが、嚮導兵器Z-01通称ランスロット。 裏切りの代名詞たる騎士の名を冠する、KMF。 そういえば、虫は仲間を裏切ることがあるのだろうか。 「ロイド」 考えは中断された。考えよりも上位の意志による働きかけ。 笑みを浮かべて、その足元に膝をついた。 「いかがなさいました? 我が君」 「その仰々しさ、どうにかならないか」 問いには答えず、彼の主。ルルーシュは告げた。 言葉に瞬きをして理由を問えば、すぐさまお前にされても嬉しくないと言われ、ロイドは膝を伸ばし立ち上がる。 彼はそれで良いと首肯して、先程まで男がくるくると回っていた事務椅子に腰をかけた。 それだけで、覇気のある背景に見えるのだから不思議だ。 「言ってた書類、持ってきたぞ」 「あっは。ありがとうございまぁす」 「いい加減ラクシャータとの確執を、どうにかする気はないのか」 「残念ながら」 「わかった」 無理に過去を聞く気はなければ、確執を取り除こうとは思わない。 幸い、業務に支障がきたすほどでもないのだから文句は言わない。 ただ少し呆れる様子に、それが主の心底からの意見ではないと思いつつロイドは短く謝辞を述べた。 「それで? 他になにかしておくことはあるか」 ナイトメアに関して、ルルーシュは基本操作を知るばかりである。 技術者のロイドについていけるような話は無理だが、他にも彼らにはするべきことが山とある。 なにかやっておくことはないかと問えば、机に軽く腰掛けた騎士は「では少しばかり話し相手に」と望んできた。 珍しいと言ってやるのは、なにも皮肉ではない。 事実、そのようなことを言わずとも、ロイドは勝手に押しかけてきて延々とナイトメアに関して語り、去っていくのが常だ。 改めて言うなど、珍事と言っても可笑しくない。 「なんでもいいんですよぉ。なにか、ありますか?」 「それを聞いたのは、俺のほうだったのに」 呆れる口調はそのままに、きしりと背凭れに体重を預ける。 何か、あったか。などと、生真面目に話題を考える主を見やり、ロイドはそうっと眼を細めた。 人は虫に似ている。 灯を見つけたら、寄らずにはおれない。傍にずっと居たがる。 馨しい花も好きだ。明るい光も好きだ。 惹かれて、たまらない。 「―――なんだ、機嫌良さそうに笑って」 視線を上げた主の声に、一層笑みを深くする。 ヒトは虫に似ている。 明るい光を前に、馨しい花を前に、抑制など利く筈も無い。 *** 手出ししてません、よ………?! ロイルルは、爛れまくったプラトニックが理想です。 |