安らかな果実




「お兄様」
「なんだい?」
「お兄様」
「どうした?」
「お兄様」
「具合でも悪いのかな?」
「お兄様」
「お腹がすいた?」
「お兄様」
「折り紙をしようか」
「お兄様」
「良い紅茶が手に入ってね」
「お兄様」
「マカロンを作ってみたんだ」
「お兄様」
「美味しいかい?」
「お兄様」
「嗚呼、綺麗な夕焼けだ。お前の瞳と同じ色だね」
「お兄様」
「ほら、新しいお花だよ。咲世子さんが買ってきてくれたんだ」
「お兄様」
「日本には、面白い文化があってね」
「お兄様」
「今日は天気が良かったから、シーツも干せたそうだよ」
「お兄様」
「明日は降水確率が高いようだから、傘を忘れないようにしないとね」
「お兄様」
「梨のコンポートを作ってみようと思うんだけど、食べてくれるかい?」
「お兄様」
「嗚呼、待って。……、うん。もう大丈夫だ」
「お兄様」
「今度の日曜、買い物に出かけようか」
「お兄様」
「この間教えてくれた本、今点字に直している最中だから。少し待っていて」
「お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、 お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様」
「どうしたんだい?」
 ひたすらに呼び続けていたことも。
 今の今まで、意味をなさなかった言葉のやりとりも。
 すべて。
 まるで、普通というように。
 なにも、変わらないというように。
 どこも、揺るがないというように。
 微笑んで。
 兄は、膝をついて。
 見えぬ視線を合わせて。
 嗚呼、微笑んでいてくれるのがわかる。
 おにいさま。
 おにいさま、お兄様。
「あいしております。おにいさま」
「ありがとう、ナナリー。俺もだよ」


 おにいさま、わたしの愛しいおにいさま。




***
 小説を見ていて、ナナリーも内面相当ルルーシュの妹らしい人物像なのだと思いました。
 黒いんじゃなくて、歪んでるんじゃなくて。なんていうのかわからないのですが。
 





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